-第41回-
人を活かす仕組み作り(2)
-多様な人材を活用するための切り口-

前回は、大企業に比べて好待遇できなくても人材を採用するためのヒントをお伝えしました。

では、社員が個性を輝かせて働き甲斐を感じる会社を作っていく為には何が重要でしょうか。

多様性を活かす組織作りをするためには、経営者の覚悟が求められます。
取り組み方によって異なりますが、組織作りの過程においては有形無形のコストが掛かりますし、
何よりもこれまでと違うことをするには大きなエネルギーが必要になります。

例えば、先の事例で挙げたA社。
今までの活動では、障がい者を雇用してもどのように働いて貰えば分かりません。
そこで、作業の工程を細かく分類して単純化しました。障害を抱えていても任せられる仕事を創り出しました。
そのほか、5Sの徹底など当たり前のことを徹底的に追求しました。
結果として、効率の高い職場環境へと生まれ変わったのです。
当初は社員の抵抗も大きかったものの、経営者が先頭に立って粘り強く活動を続けることで、
社員の意識も変わってきました。

このように、経営者が迷わずに取り組んで行く姿勢を示すためにも、
自社の経営理念にもう一度立ち返り、ありたい姿や求められる社員像を明確にしておくことが大切です。
そのうえで、いわゆる男性新卒にこだわらずに「女性」「外国人」「高齢者」「障がい者」といった層を
切り口として活躍を求めていくことで採用募集の幅も広がっていくのです。

【女性の活躍で企業体質を変革したD社】
D社は基盤の実装や検査を主力とする電子機器製造業です。
もともとは製造業にありがちな男性主体の職場でした。
男性社員の採用が厳しいなか、パート女性社員の職域拡大や女性社員の採用に踏み切りました。
教育制度を充実させ、未経験の女性社員でも短期間でも戦力化できるようになると、
これまで職人気質の男性社員の仕事で時には不良品を抱え込むことも発生していたものが、
ミスの少ない体質に変わっていきました。
今では、48名の社員のうち36名が女性となっています。

【障がい者の戦力化に伴い債務超過から黒字に転じたE社】
E社は精密部品切削加工を展開しています。
自動車部品を主に扱っていたが取引先の海外拠点拡大などで業績が低迷して
男性社員の多くが転職していきました。残った社員の多くが障がい者や高齢者でしたが
人員リストラせずに戦力化する方向に舵を切りました。
一人一人の特性にあった配置や分かりやすいマニュアル、治具の工夫や
きめ細かいコミュニケーションに取り組むことで障がい者が自信と誇りを持って
担当業務に遂行する体制ができました。障がい者向けの対応策の効果が全社に及び、
不良率がゼロになるなど取引先の信用に結び付きました。更には障がいのある社員を
サポートする姿勢が社員同士が助け合う企業風土の醸成にも繋がっています。

上記2つの事例で取り上げたように、これまで戦力として認識していなかった人材に目を向けることで、
経営力を高めることに繋がっていきます。

ぜひ、自社の使命や理念を見直し、これまでの価値観に囚われずに人材の活用を検討してください。

NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文

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