-第33回-
事業コンセプト確立のすすめ(2)
~つくり方と活用のヒント~

前回は事業コンセプトの意味とつくり方をお伝えしました。今回は事業コンセプト確立時の注意点や活用についてお伝えします。

事業コンセプトはビジョンと合わせる
みなさんが起業するとき、それぞれ熱い想いがあったと思います。例えば「大好きなネイルをとおして女性のおしゃれをお手伝いしたい」とか、「日本文化である茶道で外国人観光客をおもてなしすることで国際交流に貢献したい」など。自分の好きなことや特技を活かして、何かを成し遂げたいという想いがみなさんを起業に駆り立てたのではないでしょうか?
そうした想いを具体化したものをビジョンといいます。ビジョンは、最終的に達成したいことなので、事業のゴールになります。これに対して事業コンセプトは、事業のスタート地点となります。よって、ビジョンと事業コンセプトの方向は合っていることが大切です。例えばビジョンが「洋菓子ファンに感動を与えたい」としているのに、事業コンセプトが菓子業界全体に向けたものになってしまうと、ゴールへの道のりは遠くなります。事業コンセプトがビジョンとズレないように注意しましょう。

キャッチコピーで認知度アップ
事業コンセプトをつくったら、それを短いキャッチコピーで表現することにトライしてみましょう。自己紹介をする時や会社パンフレット、ホームページをつくる時など、自社の事業を簡潔に伝えたい場面はいろいろあります。こうした場面にキャッチコピーで表現した事業コンセプトを伝えることで、すぐに理解してもらい記憶にも残りやすいメリットが期待できます。有名な例では某理容チェーンの「10分1000円カット」があります。

時々事業コンセプトを見返してみる
事業をしていくなかで、いつの間にか事業コンセプトからズレた方向に進んでしまうことがあります。時々事業コンセプトを見返し、方向がズレていないか確認しましょう。また、そもそも事業コンセプトがうまくカタチになっていない場合は、コンセプト自体を柔軟に見直しましょう。

〈事業コンセプトを確立してうまくいった例〉
ある美容室のお話です。その美容室では「働く女性を癒したい」というビジョンがありました。しかし、それがうまく実現できていないと感じていました。そこでサービスやターゲットを再整理し、「働く女性に対して、本当に落ち着ける空間で美容と癒しを提供する」という事業コンセプトを確立しました。それに伴いお店は女性専用サロンへ変更、サービス内容も絞り込みました。その結果、お客さまは男性や子どもの目を気にすることなく、落ち着いた空間で充実したサービスを受けられるようになり、顧客満足度を向上させることが出来ました。

みなさんも起業するにあたって抱いたビジョンを達成するために、事業コンセプトを考えてみてください。

NPO法人中野中小企業診断士会 黒崎広行