-第175回-
性格と仕事の成果との関連性を考える「ビッグ・ファイブ」(2)
- 自分の成長や、部下の育成に役立てる -

前回は、性格スキルにかかわる5つの特性(ビッグ・ファイブ)、すなわち「開放性」「真面目さ」「外向性」「協調性」「精神的安定性」と、仕事のパフォーマンスとの関係についてご説明しました。今回は、これから鍛えられる性格と、部下の育成法への応用について、ご説明します。

1.年を取っても鍛えられる性格は?

認知スキル(知性、知能、学力などテストで測れるもの)は10歳までにかなり開発されますが、性格スキル(個人的な性格的特徴でテストでは測れないもの)は10代以降もかなり鍛えることができます。イリノイ大学のブレント・ロバーツ氏らは、これまでの研究を踏まえて、「外向性」を「社会的優越(自己主張が強い性向)」と「社会的バイタリティ(1人を好まず群れたがる性向)」に分けた上で、年齢に応じたビッグ・ファイブの変化を調べました。

これによると「社会的優越」「真面目さ」「精神的安定性」「協調性」は長い人生を通じて伸ばすことができます。特に「協調性」は40代以降もかなり伸びます。「真面目さ」「精神的安定性」そして「協調性」については、10代の伸びよりもむしろ、20代、30代の伸びが大きくなります。「開放性」「社会的バイタリティ」は20歳前後でほぼ決まり、特に「社会的バイタリティ」はそれ以降、低下していきます。

一方、認知スキルのほうはどうでしょうか。認知スキルを結晶性知性(知識)と流動性知性(思考力)に分けた分析によれば、前者は人生の中で高まり続けますが、後者は逆に低下し続けることが知られています。

知識はストックですので年月を経るとともに蓄積され伸び続けますが、思考力は10代までのできるだけ早い時期に鍛えることが重要になります。

2.調査結果を部下の育成に役立てる
 
このような調査結果は、ご自分の性格開発だけでなく、部下の育成にも役立てることができます。どのような職種でも重要な「真面目さ」「統制の所在」「自尊心」を20代のうちに固めることができれば、その後のビジネスパーソンとしての大きな成長につながります。

部下の不真面目な態度をただ口やかましく注意するのではなく、「真面目さ」が本人の今後のキャリア形成にとって非常に重要であることを認識させることが有効です。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元
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