-第174回-
性格と仕事の成果との関連性を考える「ビッグ・ファイブ」(1)
- 自分の成長や、部下の育成に役立てる -

人間の能力は、知性のほかに性格によっても決まります。ビッグ・ファイブとは性格にかかわる開放性、真面目さ、外向性、協調性、精神的安定性の5つの特性を示したものです。どの性格が重要なのかは仕事内容によって異なります。今回は、自分の成長や部下の育成の指針となる性格とパフォーマンスとの関係についてご説明します。

1.性格スキルのビッグ・ファイブ

人間の能力は、大きく認知スキル(知性、知能、学力などテストで測れるもの)と性格スキル(個人的な性格的特徴でテストでは測れないもの)に分かれます。ビッグ・ファイブとは、性格スキルにかかわる5つの特性を示したものです。1980年代に心理学者たちが、様々な人間の性格に関する検査結果を統計的にまとめました。

<性格スキルのビッグ・ファイブ>
〇開放性
新たな美的、文化的、知的な経験に開放的な傾向。好奇心、想像力、審美眼。

〇真面目さ
計画性、責任感、勤勉性の傾向。自己規律、粘り強さ、熟慮。

〇外向性
自分の関心や精力が外の人や物に向けられる傾向。積極性、社交性、明るさ。

〇協調性
利己的ではなく協調的に行動できる傾向。思いやり、やさしさ。

〇精神的安定性
感情的反応の予測性と整合性の傾向。不安・いらいら・衝動が少ない。

2.性格と仕事のパフォーマンスとの関係

ビッグ・ファイブは、仕事の成果に影響を与えます。下記はこれまでの研究成果をもとに仕事の成果と各ビッグ・ファイブ特性との相関係数(2種類のデータの関係を示す指標)をみたものです。

<各性格と仕事の成果との相関係数>
■真面目さ:0.22、■外向性:0.13、■精神的安定性:0.08、■協調性:0.07、■開放性:0.04

※値が1に近いほど正の相関(その性格が当てはまるほど仕事の成果が高まる)があり、値が小さいほど相関が弱く、マイナスになると負の相関(その性格が当てはまるほど仕事の成果が低くなる)があります。

各性格と仕事の成果との関連性の強さでは「真面目さ」が一番高くなっています。「真面目さ」の重要性は、仕事の種類や特徴にかかわりなく、広範な職業に影響を与えることが明らかになっています。

一方、明るさ、社交性を示す「外向性」と仕事の成果との相関係数は、プロフェッショナル(学者、医師、弁護士など)の場合、マイナス(「外交性」があるほどパフォーマンスが落ちる)ですが、管理職、営業職ではそれぞれ0.18、0.15と職種の中では最も高い数字となっています。やはり他人との交流や協調がより求められる職種ほど「外向性」が重要になります。

「真面目さ」と並んで職業人生に強い影響を与える性格スキルとしては、「精神的安定性」の1つの側面である「統制の所在(責任の所在を他人や環境ではなく自分自身に求める程度、自己責任感の度合い)」や「自尊心」が挙げられます。

職に就く前の「自己責任感」や「自尊心」が強いほど、将来の賃金が高くなることが、いくつかの研究で明らかになっています。

次回は、これから鍛えられる性格と、部下の育成法への応用について、ご説明します。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元
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