-第170回-
創業前にやっておくべき初歩の初歩(1)
~まずは創業前に「心得ておくべきこと」~

今までずっと会社に勤めていたけれど、そろそろ独立して自分で仕事を始めたい。これまでの経験や技術を活かしたい。独立してバリバリ仕事をして、儲けている人を見ると、自分もそうなりたいと思いますよね。でも、最初からそううまくはいきません。
まずは、創業前に「心得ておくべきこと」を見ていきましょう。

①会社員時代の肩書は通用しない。
今まで大会社に勤務していて、どんなに高い地位にいたとしても、そんなことは誰も気に留めません。創業したら、あなたという一人の人間が何ができるのか、顧客のためにどんなことをしてくれるのかが見られるのです。

②会社勤め以上にハードな世界
もちろん9時~17時で仕事は終わりませんし、土日祝日も定期的に休めるわけではありません。納期や締切りに間に合わせるために徹夜したり、短時間睡眠が続いたりすることもあり得ます。自分が動かないと事業は何も進まないのです。
  
③意外と自由ではない
日本政策金融公庫が行った「2021年度新規開業実態調査」によると、開業動機で一番多いのが「自由に仕事がしたかった」(54.1%)だそうですが、創業したといっても、自由に自分の仕事だけをやればいいというわけにはいきません。営業、事務、経理、申告、社員やアルバイトを雇えば雇用管理など創業当初はすべて自分でやらなければなりません。あるカメラマンの方は、創業したら自分の仕事に集中できると考えていたそうですが、半分以上は本業以外の業務に追われているとおっしゃっていました。

④すべて自己責任の世界
「どんな事業をやるか」「どうやって進めていくのか」「誰と仕事をするのか」など、創業後はすべて自分で決めていかなくてはなりません。失敗してもそれは自分で責任を取らなくてはなりません。クレーム対応も自分自身で。対応を間違えればその後の仕事は来ない可能性があります。

⑤定期的な収入は保証されない。
当たり前ですが、自分で仕事をとってこなければ、収入はありません。また、創業前に予想した収入通りの収入が得られるとは限りません。前述した「2021年度新規開業実態調査」によれば、創業から約1年後において、創業者の6割近く(57.5%)は創業前に予想していた月商に達していないのです。

⑥体が資本
まずは健康であることが大前提です。業種によって異なりますが、今まで以上に動き回ったり、頭を使ったりと、自分の体を酷使する機会が増えます。自分の体の状態を知っておくために、会社にいる間に健康診断を受けたり、問題があれば創業前に治療しておきましょう。もちろん、創業後も定期的に健康診断を受けることをお勧めします。
 
⑦家族の協力が不可欠
何といっても、創業することを家族に話して理解を得る必要があります。自宅で創業する場合、直接手伝ってもらわなくても、家族が電話に出ることがあるかと思いますが、その対応次第では信用を失うこともありえます。

次回は、創業前に「知らないと後悔する3つのポイント」を解説します。

NPO法人中野中小企業診断士会 近藤有希子