-第163回-
既存顧客が大事な理由(2)
-優良顧客を見極めて収益を伸ばす-

前回は、なぜ新規顧客の開拓よりも既存顧客の維持が大事なのかについて触れ、一部の優良顧客にフォーカスする必要性を説明しました。今回は優良顧客に育てるための考え方について取り上げます。

1.顧客は満足しただけではリピートしてくれない

 顧客のリピート率は、満足度が上がるに比例するのではなく、最高度の満足に達したときに突然リピート率が高まる傾向があり、これをホッケースティック・ロイヤルティといいます。
例えば5段階の顧客満足度調査で、満足度の平均が4であったら、総じて顧客の満足度は高いのだから、リピートや口コミが期待できると安心してしまうかもしれません。しかし満足度が4の顧客は、リピートしてくれるわけでも、新しい顧客を紹介してくれるわけでもありません。
リピートしてもらいたい、口コミで新しい顧客を紹介してもらいたいのであれば、顧客満足度を5にする必要があるのです。

2.あなたはうちの商品を知人に薦めたいですか?

NPS(ネット・プロモーター・スコア:推奨者の正味比率)は、製品やサービス、ブランド、企業に対するロイヤルティの指標を測るためのものです。米国のコンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニーのフレドリック・F・ライクヘルド氏が提唱しました。
究極の質問である「あなたはそれを友人や同僚に薦めたいと思いますか?」という問いに対する答えを、0から10の11段階で調査します。10から9をプロモーター(推奨者)、8から7をニュートラル(中立者)、6以下をデトラクター(非難者)に分類します。推奨者であるプロモーターが占める比率から非難者であるデトラクターが占める比率を差し引いた数値がNPSとなります。
したがってNPSの数値は、推奨者が非難者より多ければプラスになり、非難者の方が多ければマイナスになります。たとえばプロモーターが30%、デトラクターが15%の場合、NPSは15%となります。
空き部屋を貸す側と旅行者とをつなげるサービスを行うAirbnbは、顧客満足度の向上に力を入れるため、ユーザーからの紹介を重視しNPSを実施した結果、質問項目に10点(満点)をつけた推奨者の再予約率は、0~6点をつけた非難者より13%高いことがわかりました。
コクヨは、これまでの顧客満足度調査にNPSの項目を加えて調査した結果、WEBよりも電話で顧客に対応した方がNPSが高いことがわかり、改善策の策定に活かしているそうです。
みなさんのビジネスでも、顧客アンケートを実施する際に、「あなたはそれを友人や同僚に薦めたいと思いますか?」という問いを用意し、自分のビジネスへの忠誠心が上がっているか確認してみるとよいでしょう。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元