-第162回-
既存顧客が大事な理由(1)
-優良顧客を見極めて収益を伸ばす-

 「お客様をどうやって確保するか?」と問われたら、どう答えるでしょうか?おそらく大抵の方は、広告などを使って新規顧客を開拓することを想像するのではないでしょうか。しかしながら、起業したばかりの企業の場合でなければ、多くのビジネスでは、新規顧客の獲得よりも、既存顧客の維持のほうが重要な課題となります。

1.既存顧客が大事な理由

なぜ既存顧客を維持すると利益がもたらされるのでしょうか。次の理由が考えられます。

〇購買・残高増利益
その製品やサービスに満足している顧客は、1年目よりも2年目、2年目よりも3年目により多額の購入をする傾向があるといわれています。これが最も大きな効果です。

〇営業費削減利益
 既存顧客の維持にかかる費用は、新規顧客の開拓のコストよりもはるかに安いです。1対5の法則というものがあります。これは、「新規顧客の開拓コストは、既存顧客の維持コストの5倍かかる」というものです。

〇紹介利益
 いわゆるクチコミ効果です。特に、新規性が高く、無形で、高額な製品・サービスほど、クチコミの影響は大きくなります。既存顧客の満足度を高めてクチコミにどう繋げるかは大きな課題です。

〇価格プレミアム効果
 既存顧客は値下げ圧力が弱いということです。満足度の高い顧客は、あまり値下げ要求をしませんし、原材料価格の高騰によるコストアップの価格への転嫁も、比較的受け入れやすいです。

マーケティングでは、5:25の法則というものがあります。これは、既存顧客の離脱率を5%改善すると、利益が25%上昇するというものです。
これに従えば、現在の顧客離反率が20%(毎年、20%の顧客が流出する)だとすると、これを16%に改善するだけで、現状の利益を維持することができるのです。

2.一部の優良顧客が売上の大半をもたらしてくれる

 実際の企業の顧客別を調査すると、売上の80%は20%の優良顧客によってもたらされるという80対20の法則が存在すると言われています。厳密にこの数値どおりの結果となるかは別としても、一部の優良顧客からの売上が全体の売上の大部分を占めるというケースは多いでしょう。優良な既存顧客の維持の重要性を認識して頂くために、顧客別の売上データが把握できているようでしたら、是非確認してみてください。
 80対20の法則が教えてくれることは、「お客様はみな神様ではない」ということです。既存顧客を維持するためには、満足度を上げる必要があり、そのためには手厚いサービスが必要です。しかし、既存顧客のすべてに手厚いサービスを行うことは不可能ですし、実際に効果もありません。優良顧客となる見込みがありそうな顧客にフォーカスする必要があります。
 

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元