-第158回-
同一労働同一賃金(1)
-企業経営に与える真のインパクト-

皆さんは同一労働同一賃金についてはご存じだと思います。なぜ、いまこの話題をお伝えするかといいますと、中小企業に対しても2021年から猶予期間が終了し適用されるからです。既にご対応を済ませておられる方もいらっしゃるとは思いますが、今一度制度の振り返りをするとともに、同一労働同一賃金が企業経営に与える影響をお伝えしたいと思います。
同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者(正社員や無期雇用のフルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指す取り組みを指します。具体的には、単に「正社員」「パート」といった雇用形態の違いによって待遇差を設けるのではなく、職務内容(業務の内容や職責)や配置変更の範囲を根拠に、労働者を適正に処遇しましょうという制度です。派遣労働者への同一労働同一賃金、及び大企業におけるパートタイム労働者・有期雇用労働者への同一労働同一賃金は、すでに2020年4月より企業規模を問わず適用となっています。
2021年4月からは中小企業でも、パートタイム労働者・有期雇用労働者への同一労働同一賃金適用となるわけですが、現場においては以下2つの観点からの取り組みが求められます。
1. 不合理な待遇差の禁止
同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。これまで、「正社員」「パート・アルバイト」「契約社員」といった雇用形態の違いによって無条件に設けていた待遇差は、今一度見直し、改善していく必要があります。
「不合理な待遇差の禁止」については、厚生労働省が対応に役立つ点検・検討マニュアルやガイドラインを出しているますので参考にしてみてください。
厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
2. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができるようになります。事業主は、非正規雇用労働者から求めがあった場合は、説明をしなければなりません。説明に際しては口頭、もしくは文書交付によって行うこととなっていますが、口頭で行う際にも併せて文書交付がある方が望ましいとされています。
同一労働同一賃金についての罰則規定は現在ありません。
ただし、同一労働同一賃金を無視し、雇用形態の違いによる不合理な格差があった場合、従業員から正社員との待遇格差について損害賠償請求(差額請求)を受ける恐れがあります。そのため、まだご対応されていないのであればされなければならないでしょう。
次回は、同一労働同一賃金を経営に生かすためのヒントをお伝えしますのでご覧いただければと思います。

NPO法人中野中小企業診断士会 堀川 一