-第157回-
事業計画書作りが難しい人のための処方箋
-苦手意識を乗り越える3つのポイント-
「起業したいけれど事業計画書が書けないんです」「とても自分一人で事業計画書を書ける気がしません」「補助金申請をしたいけれど事業計画書が書けないんだ」・・・
今月のコラムでは、そんな方に向けて良くある相談の中から3つのパターンを選んで、その処方箋をお伝えしています。
前回(https://nakano-sangyoushinkou.jp/backnumber/6595)のコラムでは、一つ目のパターンとして「なんとなく起業を考えていたAさん」の事例をご紹介しました。
今回は、残りの2パターンについてご紹介します。
パターン2:事業計画書を作り始めると気持ちが萎える
「融資を受ける為に必要だから作ろうとするんですが、すぐに挫折しちゃうんです」
このパターンの人は、挫折をする原因は何かを振り返ってみることが大切です。大抵の場合、事業のイメージが明確になっていません。計画を作るプロセスの中でイメージも明確になってくるのですが、何度取り組んでも挫折してしまう人には次の処方箋をお勧めしています。
処方箋2:妄想する
「え?精神異常みたいで嫌だ!」と感じた方もいらっしゃるかも知れません。しかし、起業した瞬間から訪れる様々な困難を乗り切っていくには『根拠のない確信』も重要な要素なのです。パターン2に陥りがちな人は、できることを確実に進めていこうとする堅実な方が多いのですが、物事を堅実に進めていける強みがマイナスに働くと次の一歩が踏み出せません。妄想は自分の枠を超えていく手段の一つとして有効です。
事例2:事業コンセプトを書こうとすると動けなくなってしまうBさん
「事業コンセプトが大事なのはわかったので、しっかり作ろうと思うのですが、いざ書こうとすると頭が真っ白になっちゃうんです」
自宅でリラクゼーションサロンを開きたいBさん。アロマなどのスクールも卒業し、準備万端だと思っていたのに、次の一歩が踏み出せません。
そこで、『理想の一日を妄想する』ことをお勧めしました。必要なものは全て揃っていて何でもできるという前提で、理想のサロンで展開される一日のストーリーを妄想して少しずつ書き出して貰いました。妄想を繰り返すうちに「誰に」「何を」「どのように」提供しているのかが明確になり、事業コンセプトが完成しました。
パターン3:損益計画が作れない
「お金の話になると、頭が真っ白になってしまうんです」
このパターンの人は、一つ一つの要素に分解して、お金について書きだしていくことが大切です。大抵の場合、イメージが明確でも細部までは具体化されていません。
処方箋3:足を動かす
「お金の話なのに足?」と感じられたかと思います。お金に繋がるまでイメージを具体化するためには情報が必要です。例えば、飲食業専門のあるコンサルタントの方は、ざっとした話をしても売上や利益まで瞬時にざっとはじき出し、ズバリと指摘します。これは、豊富な経験から様々なパターンの収支計算ができる情報を持っているからできることです。これから起業したい方がそんな情報を持っている筈もありませんので、『自分で動いて調べる』ことをお勧めしています。
事例3:出店する立地が決められないCさん
「商店街に出店すると補助が受けられると聞いたので、商店街に出店したいのですが、どこを選べば良いか迷っているんです。先日、○○商店街に関して不動産屋さんに訊いたら家賃が高くて」
立ち呑みの居酒屋で開業したいCさん。集客数のイメージに確信が持てず、適切な家賃が判断できず困っていました。そこで、会社が休みの日や有給休暇を利用して数多くの商店街を見て回り、いくつかの候補を絞ったうえで通行量の調査をすることをお勧めしました。その結果、Cさんは実際に通る人の流れから、集客数を具体的にイメージすることができたのです。
公開されている統計データからも集客数のイメージは可能です。しかし、現地に赴いて調べることで、その場所を肌で感じることができます。その肌感覚が重要で、そのためには足を動かすしかないのです。
今月は、良くある3つのパターンから処方箋をご紹介しました。実際には、直面する問題はそれぞれ違います。ぜひ、「どこでも出張相談」「窓口相談」「なかのビジネス創造塾」をご活用ください。
NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文