-第155回-
テレワーク移行前に考えておくべき会社のKPI
-テレワークでも公正な人事評価をするために-
前回(https://nakano-sangyoushinkou.jp/backnumber/6404)は、KPIとは何かということに軽く触れ、A社の事例をご紹介したうえで、2つのポイントのうち『テレワークを導入すると決める』ことについてお伝えしました。
A社では、社長がテレワークを前提としてKPIの設定を行うことを決めました。続けてA社の事例を見てみましょう。
(事例)テレワーク導入に伴うKPIの設定で社員間の風通しが良くなったA社
社長は、テレワーク導入を前提にして、公正な評価を行うための検討をすすめることにしました。社長自身がリーダーとなり必要性を全社員に伝えると共に、次期リーダーとなる若手を選抜してプロジェクトチームを作りました。コンサルタントにサポートを依頼し、KPIの設定を進めたのです。
プロジェクトチームは最初に営業とスタッフでお互いに不満に思うこと、会社に対して不満に思うこと、などを遠慮なく共有しました。全ての業務を洗い出して、業務のフローチャートを作るなどしてテレワーク化できるところと難しいところを切り分けました。そして、事業計画書を各個人の計画にリンクさせるようにしたのです。
これまで、営業担当者は事業計画書の目標数字しか見ていませんでしたし、スタッフは経費削減などの定量目標しか関わりを持っていませんでした。お互いに不満をぶつけあったことで、営業はスタッフが思うほどサポートを受けていると思っておらず、スタッフは営業の杜撰な経費処理に腹を立てていることが共有されました。業務のフローチャートを作成することで、お互いに留意すべきポイントが明確になりました。プロジェクトチームは、お互いをサポートし合える体制をつくることを目標に掲げ、KPI設定のプロセスにおいて、社員間の風通しが劇的に改善しました。
現在は、設定したKPIが本当にKPIとなっているかを検証しているところです。
A社の事例では、KPIの設定プロセスの中で社員間の風通しが良くなるという効果が生まれました。更に、社員が事業計画書を目標数値以外で把握していないという実態も分かりました。
ポイントの2つ目は、事業計画書を共有し、会社の事業計画書を個人の計画にまで落とし込んでいくことです。特に、経営理念や事業の目的、行動指針といった行動判断の軸となる要素は充分に議論することが大切です。
目標が共有されたうえで、各自の目標を達成するための鍵となる行動を抽出するのですが、ここで大切なことは、全ての業務を洗い出してフローチャート化していくことです。この時点で、業務の非効率な点が見えてきますし、マニュアルも作りやすくなります。
このプロセスを進めるにあたっては、事業計画書が欠かせません。もし、事業計画書を作成せずに、売上目標などだけで取り組みを進めてきたのであれば、まずは事業計画書の作成からスタートしてください。KPI作成以前に、事業計画書が経営力向上の鍵となるのです。
単純に手段としてのテレワーク導入にとどまらず、経営力を高めるきっかけとして活用していただきたいと思います。必要に応じて、「どこでも出張相談」「窓口相談」をご活用ください。
NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文