-第152回-
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?(1)
-中小企業も取り組みが必要-

みなさんは「DX」という言葉をご存知でしょうか?
経済産業省の「DX推進ガイドライン」では、DXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
IT活用とどこが違うのかよくわからないかもしれません。従来型のIT活用で多かったのは、『過去のデータを使って、今の仕事を効率化する』という使い方です。しかし、大量のデータをAIなどで分析すれば、『これから起こること』も分かるようになります。このような“未来予測”はDXの重要な要素です。
そして、もう一つが、技術を活用して『新たなサービスや付加価値を生みだす』というのもDXの重要な要素です。例えばスマートフォンなどを通じて企業が顧客と直接つながることで、消費者をより深く理解できるようになります。そのデータを生かすことで、よりよい商品・サービスや新たな事業モデルを生み出すことができるわけです。ポイントは、クラウドやビッグデータなどを利用し、新たなビジネスモデル、価値の創出を行うという点です。つまり、企業としてWEBサイトを構築する、ネットショップの運営を始めるといったデジタル化ではなく、デジタル化を進めることで革新的なサービス、ビジネスの創出をすることがDXです。
DXは仕事の効率化ではなく、事業構造の変革により生存競争を勝ち抜くためのデジタル活用という視点を持っています。ITによる業務効率化はDXを実現する前提の一つでしかありません。DXの本質は“事業を変革すること”。IoT、AI、クラウドなどを活用しながら『課題を発見し、事業のあり方を変え、企業の価値を高める』ことが中心で、データや技術を事業にどう活かすかが問われることになるのです。
2020年9月に日本能率協会が公開した「日本企業の経営課題2020」によると、DXの推進・検討に着手済みの企業は全体の57.3%という結果が出ています。しかし、これは大企業が83.2%という高い数字を出しているからであり、中小企業に限っていえば、DXの推進・検討に着手済みはわずか34.9%でしかありません。基幹系システムの老朽化は大企業に限った話ではないことなど、中小企業だからといってDXへの取り組みが時期尚早なわけではありません。むしろ、中小だからこそスピード感を持って進めていかなければ、生き残るのは今以上に厳しくなるといえます。DXの視点は、これから創業する方も参考になると思われます。
次回は、DXに取り組む際に必要となる事業構想とそのポイントについてお話させていただければと考えていますのでご覧いただければ幸いです。

NPO法人中野中小企業診断士会 堀川 一