-第149回-
コロナ禍における小さなお店の販売促進
-廃業するか迷っている店主のための3つのヒント-

前回のコラム(https://nakano-sangyoushinkou.jp/mailmagazine)では、「先行きが見えず廃業を決めたA店」の事例から「事業を始めた目的に立ち返る」ことをお伝えしました。

今回は、残る2つのヒントをお伝えしていきます。

(事例2)物販で飲食売上の減少をカバーしているB店
B店は、ご主人と奥様で切り盛りしている飲食店です。地元に密着して営業を続けており、常連客もついてきていました。ところが、コロナ禍でイベント等へのスペース貸しや夜間営業時のお酒が激減しました。しかし、こだわり食材やマスクの物販、テイクアウトメニューの展開、などで売上減少がある程度カバーでき、店内飲食ができない分として物販やテイクアウトを利用してくださる常連に助けられました。小規模事業持続化補助金の申請にも挑戦して採択され、テラス席を設置するなどの挑戦を続けています。

(ヒント2)収入のラインを複数化する
B店のように、飲食店が物販を行うといった「収入ラインの複数化」も重要な選択肢の一つです。B店の場合には、常連のサポートがありましたが、常連がサポートできるネタがあったということがポイントです。お食事券の前売りなど、様々な方法がありますが、後にお食事券での提供が必要となることを考慮すると、複数の柱を作っておくことはリスクを下げる意味でも検討する余地があるでしょう。

(事例3)コアな顧客に絞り込むことでコロナ禍の影響が殆ど無いC店
C店は、地域密着から広域の集客に方針を転換した甘味処です。天然氷のかき氷を取り扱い、商品の品質向上に努めてきた取り組みが実り、ゴーラーと呼ばれるマニアな客層を掴みました。1杯1000円を超えるかき氷を一人で3杯は食べて帰るマニアックな客層は、コロナ禍にあっても殆ど影響を受けていません。コロナ禍ということもあり予約制にしていますが、予約は早々に満席になります。

(ヒント3)顧客層を転換する
C店の場合には、コロナ禍以前から主とする顧客層の切り替えを進めてきました。地域密着や地域貢献の気持ちは持ちつつも、単価の安い甘味処で事業を存続させるためには、客単価の高い層にシフトすることが必要と考えたからです。そこで、店内飲食についてはかき氷というメニューに着目し、顧客層を転換することで、地域密着と高単価へのシフトを両立させました。C店のように「提供商品の高単価化」も重要な選択肢の一つです。その分、高品質な商品・サービスの開発が必要となりますが、高単価化が実現すれば、少ない客数で売上が確保できます。従来の客層やメニューにこだわり過ぎず、ゼロベースで考えると良いでしょう。

3つの事例に共通するのは、国・自治体・既存顧客に依存することなく、自ら新たな道を拓こうとする姿勢です。前向きな廃業にせよ、新たな収入ラインの開発にせよ、店主の行動が鍵です。

行動する意欲のある方は、リスクを低減する意味で、専門家派遣などを利用されることをお勧めします。
国や自治体のサポートをうまく活用しながら、販売促進策を検討しましょう

NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文