-第147回-
女性活躍の認定取得に向けた小さな一歩
-どこから手を付けたら良いか分からない人のためのポイント-
前回のコラム(https://nakano-sangyoushinkou.jp/backnumber/5800)では、女性活躍の認定を取ろうとして社員の拒否に困惑したA社社長の事例をお伝えしました。
認定取得に向けて取り組むにあたっての3つのポイントのみをお伝えしていましたので、今回は社員に拒否された原因と併せてポイントをお伝えしていきます。
原因1:社長が安易に女性活躍推進に取り組もうとした
社長が取り組もうとしたきっかけは「採用に効果がある」という社長仲間の一言でした。そもそも「女性活躍推進」という言葉の前提は「女性が活躍していない、女性の活躍が不足している」ということです。その裏側には歴史的な背景や女性の活躍を妨げる社会的な要因・会社の風土があり、取り組みには困難が伴うことを認識しておくことが必要なのです。ところが、社長はそのような認識もなく不用意に取り組みを伝えたため、社員の反発がおきたのです。
ポイント1:社長が覚悟を固めること
採用や認定の取得がゴールではありません。会社が存続し続けて社会に貢献すること、社員一人一人が個性を輝かせて働くこと、結果として会社に関わる人たちが幸せになること、など経営者が目指したい姿を意識することが大切です。女性活躍推進に取り組んだ後のことを見据え、「絶対に実現する」という社長の覚悟を固めることがポイントです。認定取得だけ掲げて申請を社員に丸投げしていませんか?
原因2:女性社員が管理職として活躍するロールモデルがない
ロールモデルとは、具体的な行動や考え方を模倣・学習する対象になる人、いわゆる「お手本となる人物」のことです。A社の場合、10名の社員の中で女性は僅かに3名、うち1名は社長の奥様でした。奥様も経理スタッフとしての働きはしていても、自分が管理職という認識はありませんでした。そのような状況では、女性管理職のお手本になる人がいなかったのです。A社に限らず、お手本になる女性管理職がいないことが多く、女性管理職がいても昔ながらの男性的な働き方をする人ではロールモデルとしては適切とは言えず、管理職の登用には難色を示されるケースが多くなります。
ポイント2:社員の状況を知ること
社員の状況を知らずして取り組みを進めることはできません。また、取り組みをスタッフに丸投げすることは生の状況を知るチャンスを放棄することと同義です。社長自らが社員の状況を知るために動くことがポイントです。問題を知り、取り組むべき課題を明確にしない限り具体的な取り組みを進めることができません。社員が何に悩み、困っているか、知っていますか?
原因3:社員が取り組みから生まれるメリットを認識していない
『女性活躍推進』という言葉からの印象で、男性社員が取り組みの当事者で無いと認識したり、自分たちにデメリットあると感じたりするとうまく進みません。A社の場合には、「女性社員の贔屓」と受け止められてしまいました。女性活躍推進には、まだまだ多数を占める男性社員の協力が欠かせません。そのためにも全ての社員が取り組みから得られるメリットを共有しておくことが大切です。コロナ禍で強制的に働き方を変化させていく流れもできてきていますが、女性が活躍できる土台を整えることは、親の介護などを抱える男性にも役立ちます。ぜひ、全ての社員が当事者となるよう、情報を共有してください。
ポイント3:社員とのコミュニケーションを密にすること
取り組みのメリットを伝えていくことは、担当者任せにせずに社長自らが密に行うことが重要です。社長の覚悟を伝えられたり、社員の様子を知ったり、自ら行うことで得られるものは大きいのです。
A社では、社長が3つのポイントを踏まえ、社員の話を聴き、社員が得られるメリットを伝えていきました。社長仲間から聞いた「女性管理職登用」の目標は外し、社員が気持ちよく働ける職場環境の整備と位置付けたところ、介護問題に悩む男性社員のケアにも繋がりました。女性活躍推進の取り組みが、男性社員の介護離職防止に役立ちました。
3つのポイントを踏まえ、取り組みをスタートさせたら計画の作成などには国の支援があります。
アドバイザーの派遣(https://joseikatsuyaku.com/)や計画作成支援ツール(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000142902.pdf)などを活用していきましょう。
前段として、「どこでも出張相談」「窓口相談」をご活用ください。
NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文