-第137回-
交渉に当たり準備しておくべきことは何か?(2)
-交渉は始める前に8割決まる-

前回に続き、「部品メーカーの営業マンが自社の新製品について、大手企業との取引実績をつくるために、大手電機メーカーX社にアプローチする」というケースを例に交渉の準備について解説します。

1.目標を設定する
目標の設定とは、自らのミッションを具体的な数字や条件に置き換えることです。価格交渉の場合、売り手(いかに高く売るか)と買い手(いかに安く買えるか)とでは希望金額が異なりますから、すぐに妥結することはまずありません。
よって、最高目標と最低目標を設定しておく必要があります。この交渉可能範囲のことを、ZOPA(Zone Of Possible Agreement)といいます。

2.創造的選択肢を考える
交渉において、自分の思いどおりに利益を手にすることは稀です。必ず何らかの譲歩を迫られると考えたほうがよいでしょう。また、自分が譲歩することで、相手からの譲歩を引き出すこともできます。たとえば価格で譲って、納期や支払い条件で譲ってもらうといったことはよくあります。
「利益は複数あること」「利益は人によって異なること」を念頭に、先に述べたように「自分側の負担が少なくて相手側に大きな利益をもたらすもの」と「相手側の負担が少なくて自分側に大きな利益をもたらすもの」を洗い出すことになります。

3.BATNAを用意する
BATNAとは、「Best Altenative To a Negotiated Agreement」の略で、「交渉が決裂した時の対処策として最も良い案」のことです。
たとえば、「どこか大手電機メーカーと取引実績さえ作ればよい」というのがミッションで、X社以外に同じく大手のY社との売買契約がまとまりそうであれば、Y社との取引条件がBATNAになります。
BATNAを起点にZOPA(交渉可能範囲)の「交渉に当たっての最低目標」が形成されることになります。
ミッションが実現できる範囲であれば、BATANAを上回る範囲内で譲歩したとしても、適切な交渉姿勢だということになります。
交渉の妥結はミッションの実現のための手段に過ぎませんから、無理にまとめる必要はありません。自らのBATNAと照らし合わせて、それを下回るようなら撤退も辞さないという姿勢が望ましいです。
ビジネス交渉に当たっては、自らのBATNAを相手に悟られないようにすることが必須です。BATNAを悟られてしまうと、相手につけ込まれることになります。反対に相手のBATNAを知ることができれば交渉を優位に進められる可能性が高くなります。

以上を踏まえ、望む成果を得るための交渉の準備を入念に行ってください。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝 元