-第114回-
必ず知っておきたい交渉の3パターン
- お互いに得するための交渉の考え方 -

ビジネスにおける取引はおろか、社会生活を送る上では、交渉は常につきまといます。しかしながら、個人的な経験をもとに交渉しているケースがほとんどではないでしょうか。あるいは、「ついカッとなって交渉の席を立ってっしまう」「相手の言い分を飲んでしまう」といったように、交渉の場では個人の性格も現れやすいです。周囲の人の交渉を見よう見まねでやってみるといったケースも多いでしょう。
残念ながらこれでは、上手くいく場合も上手くいかない場合もあるでしょう。
交渉にあたっては正しい知識が必要です。今回は、交渉について、まず最初に知っておきたい「交渉の3パターン」を取り上げます。
 

1.交渉とは何か?
そもそも交渉の目的とは一体何でしょうか?第一にはなんといっても「自分の望む利益を実現すること」です。しかし、そのためには「自分と交渉相手との相互理解を通じて良好な関係を築き、相互の利益を最大化する」ことが原則になります。

こういうと、なんだか理想論のようにも思われますが、取引相手をテクニックで騙して一時自分が得したとしても、今後、取引相手はあなたとの取引を望まなくなりますから、本来得られたであろう利益を逃してしまうことになるでしょう。さらに、あなたについての悪い評判も広まるでしょうから、長い目で見てあなたは損することになるのです。

交渉術というと、とかく駆け引きのテクニックを想起しがちです。確かに場合によっては駆け引きは有効ですが、大きな視点で「相互の利益」を考える必要があります(相手が不誠実な態度を繰り返している場合や、取引関係が1回限りの場合は、駆け引きテクニックは有効です)。

2.3つの交渉パターン
 交渉には、大きく3つのパターンがあります。

(1)分配型交渉
「限られたパイをめぐって、相互が自分の取り分(利益)の最大化を図るために行う交渉」のことです。
自分が得をすれば相手は必ず損をするし、相手が得をすれば自分は必ず損をするというパターンです。価格交渉では、安い価格になれば買い手が得をし、売り手は損をします。

(2)利益交換型交渉
「パイは限られているが、自分が重要でない部分は譲り、その代わり自分にとっては重要だが相手にとっては重要でないものを引き出す」というものです。
法人取引で、売り手には「代金をその場で現金で欲しい」というニーズがあり、買い手には「できるだけ安く買いたい」というニーズがあったとします。この場合、売り手側が多少価格を安くする代わりに、買い手側からその場での現金支払いを求めるという交渉が成り立ちます。

(3)創造的問題解決型交渉
「交渉当事者が協力し合ってパイを拡大する」というものです。パイを拡大すれば、互いの取り分は大きくなります。
逆にいえば、パイが限られている(あるいは小さくなりつつある)場合には、奪い合いは熾烈になり、合意を図ることが難しくなります。
創造的問題解決型交渉の例としては、企業間の連携があります。争うのではなく共同で事業を行うことで、全体の利益を高める(その結果、自社の利益を高める)ことができます。

次回は、このうち最も使い場面が多い「利益交換型交渉」についてお知らせします。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元