-第109回-
業務の自動化で効率を上げるRPA
-急速に発展し続けるRPA-
前回は、定型業務の効率化や人手不足の解消という観点で、RPAをお伝えいたしました。定型業務に人手が必要で人手不足にお悩みの経営者の方には朗報であったと思いますがいかがでしたでしょうか。
さて、人工知能(以下AI)が急速な発展を見せているのはご存知だと思います。2015年5月、ホーキング博士は今後100年以内に人工知能(以下AIと称する)が人間を超えるだろうと警告しましたが、RPAの可能性については、AI技術が関与するため、今後もさらに発展することが予想されています。
実際に、現状においては、定型業務の自動化という段階を超え、非定型業務の自動化という第二段階の処理も可能になっているのです。
具体的には、従来型のOCR(光学的文字認識)技術ではテキストデータ化できなかった紙や画像中の文字を、文字認識に特化したAI(AI-OCR)により自動でテキストデータ化することや、音声に特化したAI(AI音声認識エンジン)により音声をデータ化することなどです。コールセンターなどでのお客様との会話の内容をテキスト化し回答の候補を表示することによりオペレータの対応への効率化に貢献しています。
更に、過去の販売データ・在庫データを活用し需要を予測し予測した物量に合わせてロボットが自動発注することなども可能になってきています。購買の仕事も任せることができるのです。
このようなRPA導入の検討は早く始めるべきなのでしょうか。かつて、「コンピュータ時代はいたるところに見えるが生産性の統計に表れていない」とIT投資が生産性に結び付いていない状況がありました。しかし、その後の1990年代には米国における生産性は大幅な伸びを記録しました。そしてその原動力がIT投資であったことが現在ではコンセンサスとなっています。生産性の向上が現れるのは、RPAなど新規技術の導入からタイムラグがあるのです。電気という技術が蒸気機関に取って代わったときも同じでした。動力を電気に変えただけで、工場のレイアウトは変わらないときは生産性の向上がみられませんでした。工場のレイアウトが変わった後に生産性は一気に向上したのです。
同様に、RPAの導入が生産性向上を果たすためには、事前に業務プロセスを見直したり、業務の見える化や標準化を行い定型業務を明確化したり、組織体制の見直しや従業員を教育訓練することが必要となります。ですから、できるだけ早い時期に導入の検討を始め、RPAの導入に備えることだけでも業務の効率化につながることでしょう。そして、定型業務に時間を割いていた従業員が付加価値の高い業務に専念するようになってこそ、生産性向上につながるのです。
事例)
A社は、医療や科学分野の翻訳サービスを手掛ける中堅中小企業ですが、OCRと機械翻訳ソフトをRPAと組み合わせて使うことにより、手作業でこなしていた翻訳業務を自動化することに成功しました。このような業務の効率化だけでなく、手作業で行っていた際の翻訳ミスを減少させ翻訳の精度を高めることに成功しました。
現在RPAを導入している企業は、定型業務が多い大企業が中心となっていますが、上記の事例からも、人手不足に直面する中小企業こそ挿入を検討する必要があるのかもしれません。
NPO法人中野中小企業診断士会 堀川 一