-第89回-
上司が部下のやる氣を引き出すために必要な3つのポイント(1)
-部下に慕われる上司になるために-
研修講師として、管理者研修をお引き受けした時によく相談を受けることの一つに「部下が思うとおりに動かない」ということがあります。書店でもモチベーション向上や部下の操縦法などのタイトルが数多く並んでいて、部下と接する管理職の苦悩を表している様に感じます。
拙著『なぜ上司のコーチングはうまくいかないのか』(http://amzn.to/2GvSYxL)では、研修をサポートさせて頂いた企業様で上司と部下の両方にヒアリングした経験から、コーチングなどの手法に頼って部下を操縦しようとする危険性について述べました。ここでは特にエッセンスとして部下のやる氣を引き出すために大切なポイントについてお伝えしていきます。
部下に慕われる上司になるために基本となるエッセンスは次の3つです。
1.部下が憧れる存在としての『見本』になること
2.部下を『信頼』して任せること
3.部下に寄り添って『支援』をすること
上司が思う以上に部下は上司を観察しています。ご自身が部下だった頃の事を思い出して頂ければ、なるほどと納得されるかも知れません。上司自身が部下が憧れる存在になることで部下は勝手にやる氣になります。
(事例)社長の本気がスタッフを動かしたA社
A社は社員数10名の部品製造業です。大手の下請けで度重なるコストダウン要請で疲弊したところに、海外への発注先移管で仕事を一気に失いました。社長は対人的には不器用で職人として会社を引っ張ってきていましたが、この頃には社員もやる氣が感じられず淡々とルーチン作業をしているような状態でした。しかし、会社の危機に際して社長が一念発起。社員に将来の夢を語り、自らが営業に歩き続けました。最初は冷ややかに見ていた社員も、自分から動き出しました。社長の本気がスタッフを動かしたのです。
上司が部下の行動に介入するほど、細かく指示を出すほど、部下は自分を肯定的に見られなくなりやる氣を失っていきます。部下の可能性をどこまでも信じて仕事を任せられるか、静かに見守って必要に応じて適切な支援ができるか、が重要です。
(事例)部下自慢のB課長
B課長はいつも部下を自慢しています。課長の話を聞いていると配下にはデキる部下しかいないようにも感じます。しかし、部下の側に話を聞くと本人はそうでもなく、部下の特技を課長がオーバーに表現している様に感じます。この課では上司は部下を自慢し、部下は上司を自慢し、と好循環を生んでいました。B課長は思い切って仕事を部下に任せ、部下が困っている時にそっとサポートしています。仕事を任せることで部下が大きく成長し、成長した部下を自慢できるのです。
ざっくりとエッセンスを述べましたが、部下をやる氣にさせるためには上司の『在り方』が重要です。『見本』『信頼』『支援』のキーワードを意識しながら部下とコミュニケーションを取ってみてください。
次回は、部下が勝手にやる氣になる環境作りについてお伝えします。
NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文