-第76回-
元気なうちにやっておきたい、事業の引き継ぎ準備(2)
-まずは取り組んでおきたい、はじめの一歩-
前回は、事業承継について検討しておく効能と考えなかった時のトラブル事例をお伝えしました。
「事業承継について考えた方が良いのは分かったけれど、どうしたら良いか分からない」という方も多いと思います。公的機関でも、相談窓口がありますので具体的に考えたい方は窓口相談を活用することが早道です。
東京都中小企業振興公社
http://www.tokyo-kosha.or.jp/support/revival/soudan.html
東京都事業引継支援センター
http://www.jigyo-hikitsugi.jp/index.php
中野区産業振興センター 相談窓口
http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/162000/d014366.html
そこまで大げさにしなくても、自分で考えたい方のために「はじめの一歩」をお伝えします。
ステップ1 経営者自身の終わり方を考える
経営者自身のゆとりあるセカンドライフを実現する為に、元気なうちから『人生の終わり方』を考えておくことが具体的な取り組みを考えるきっかけになります。終活という言葉を聞いたこともあるかと思いますが、『エンディングノート』を作成してみましょう
ステップ2 事業を続けるかどうかを考える
特に意図していなくてもお店や企業がそこにあることで、地域や社会に貢献しています。「自分が続けられるかどうか」「子供に引き継がせたいか」ということだけでなく、「この事業を存続させる意義があるか」という視点から考えましょう。
ステップ3 現状を具体的に把握する
現在の経営状況や経営者自身の財産状況や後継者候補の有無などを具体的に整理しておくと窓口相談などでも時間を有効に活用できます。特に事業について、運営の流れ、収益、自社の強み、課題などを客観的に把握できるように文書化する『見える化』は、現状の経営力アップに繋がります。
(事例)事業の引継ぎを考えることで後継者の育成に繋げたBさん
Bさんは、従業員数8名程度のサービス業です。漠然と長男に事業を引き継ぐことは考えていて、長男を取締役に据えていましたが、「あいつはまだまだだ」「頼りない」と明確に引き継ぐ時期を定めていませんでした。しかし、経営悪化に伴う事業改善計画の策定に当たって、コンサルタントのアドバイスも踏まえて10年後に経営を引き継ぐことに決め、長男をプロジェクトのリーダーに据えました。引継ぎ時期が明確になったことで長男がやる気を出し、「しっかりしてきた」とBさんは安心しています。
『事業承継』という言葉から重く受け止め過ぎずに、経営者自身がどのようなセカンドライフを送りたいか、という視点からまずは気軽に『エンディングノート』作成から取り組んでみましょう。
NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文