-第75回-
元気なうちにやっておきたい、事業の引き継ぎ準備(1)
-事業承継について考えることの効能-

「まだまだオレは現役だから、引継ぎなんて考える必要ないよ」という方が多いと思います。私がお手伝いをしている企業やお店でも、引継ぎに関して漠然とは考えていても具体的に後継者に引き継ぐ検討をスタートしているところは少ないです。

広く目を向けると、後継者が不在でお店を締めるケースが後を絶ちません。
国としても、後継者に引き継いで事業を継続させる『事業承継』に力を入れており、取り組む企業に対してのサポートも手厚くなってきています。
http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/index.html

実際のところ、「当面の店舗運営や営業活動に手一杯で考える余裕が無い」というのが本音と思います。しかし、年に一度でも構いませんので本気で考える時間を作ると、経営力アップに向けた効果が期待できます。

私が事業改善のサポートに入る企業では、基本的に事業承継についても検討して頂くようにしています。事業改善計画の立案から実行のプロセスで後継者を育成してしまおうというのが大きな狙いです。

経験的に、事業承継について具体的に考えることで、以下の3つの効能があると感じています。
1.経営者が引退後の人生設計イメージを明確にできる 
2.現在の経営で非効率な点が浮き彫りになる 
3.頼りない後継者候補が大きく成長するきっかけになる

特に、経営者が引退後の人生設計イメージを明確にしておくことは重要です。
トラブルなくスムーズに引退してセカンドライフを満喫して欲しいと思います。

(事例)事業承継について考えず、引退直前に困ってしまったAさん
Aさんは家族経営で小売商の店舗を営んでいました。6人兄弟の長男で、店舗と倉庫、住居を引き継いでいましたが、自分の代で店を閉めるつもりで特に事業承継について検討はしていませんでした。しかし、体の調子を崩して早めに店を閉めることになり、店舗と倉庫を売却して住居で悠々自適の生活を送ろうとしたところ、権利関係の整理が出来ていない事が判明しました。結局、財産の取り合いで兄弟間のトラブルに発展してしまいました。

このようなトラブルを避けるためにも、事業承継について考えることは重要です。後継者に引き継ぐだけでなく、廃業するつもりであっても『事業のしまい方』について元気なうちに考えておきましょう。

次回は、『はじめの一歩としてやっておきたいこと』についてお伝えします。

NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文

中野区産業振興センターでは、創業希望者のための6回連続講座(6/16・6/30・7/14・7/28・8/18・9/1)を実施します。これから創業をお考えの方、後継者育成をご検討のは是非ご活用ください。

6/20には「経営者の為の豊かな人生設計 死から考える豊かなセカンドライフ」を開催予定です。ご興味のある方はぜひご予定ください。