-第62回-
ライバルとの競争に勝ち残るために(1)
- 徹底したこだわりが、コアなファンの心をつかむ -
 
購入者を集客し、商品やサービスを売るということは、創業したばかりの企業だけでなく、すべての企業にとって、いつの時代でも永遠のテーマになっています。
商品が少なく消費者の求めるものが単純な時代は、それを満たせばたちまち商品は売れました。しかし、今は企業間の激しい競争によって、購入者の求めるものを満たしていった結果、世の中には僅かな差をアピールする、似たような商品やライバル達で溢れています。

それを乗り越えて集客の仕組みを創ったのが、健康志向の珈琲豆をネット販売した澤井珈琲の例です。

鳥取県にある澤井珈琲は、商店街の一店舗から始まり、健康志向の珈琲豆をネットで販売するビジネスを手がけ成功しました。単なる珈琲豆では、競合する大手に負けてしまいます。そこで、澤井社長は珈琲に含まれる「トリゴネリン」が認知症予防に効果的であるという研究論文を知り、『珈琲を飲みながらお客様が健康になれたら素晴らしい』と思い、大学や県産業技術センターの協力を得て、トリゴネンを活かしたコーヒーの開発に取り組みました。どんなに良い商品であってもその情報が購入者に届かないと意味がないと考え、安全性や脳力パワーの実証を直接広告で伝えられるネット販売で、地方から発信し全国に届ける仕組みを構築しました。その思いが購入者に届き、楽天市場ショップオブザイヤーを11年連続受賞するまでファン層を作りあげました。
現在では、コーヒー豆を焙煎して販売するたけでなく、極上アイスコーヒーギフトやスティック紅茶など特色ある商品を加えて通販市場で益々存在感を高めています。リアル店舗でも台湾や東京の浅草、銀座にも進出して事業を拡大しています。

欲しい物が簡単に手に入る時代こそ、消費者の心をつかむ「こだわり」を持った商品やサービスを作り出すことが、ビジネスチャンスにつながってきます。そして、それを購入することによって今までより健康で明るい生活をも実現できることが、コアなファンを獲得できる集客の仕組みとなったのだと思います。

ライバルとの競争に勝ち残るためのヒントをまとめてみましょう。
先ず、自分が起業したいと考える商品やサービスについて、こだわりのポイントや誰にも負けないと自信があるところを書き出して、整理してみましょう。
次に、その特徴が的確に表現されているか、具体的に伝わっているかを自分だじぇの判断ではなく、信頼できる友人や家族等にモニターしてみましょう。
さらに、それを利用することによって、今までより健康で楽しく変わってゆく自分の姿を想像することができるか、もう一度見直してみましょう。
起業では、大企業のように最初から大規模な事業展開を狙う必要はありません。考え方や嗜好が同じコアなファンをつかんで飽きさせない、離れさせないこだわりが大切なのです。
(参考出所:中小企業白書(2011年)、中小企業ビジネスサイトJ-Net21、澤井珈琲HP)

NPO法人中野中小企業診断士会 岡見育利