-第60回-
創業時に理想の組織を設計しておきましょう(1)
- なぜ成功する起業家は創業の段階から理想の組織を描いているのか -
創業相談を受ける際、こちらからいくつか質問をさせていただき、
その質問にお答えいただく形で、事業内容を具体化して行く手法を取ることがあります。
質問内容は多岐に渡りますが、代表的な質問は「どのような事業をお考えですか」「その事業を行いたい理由は何ですか」「資金はどの程度用意できそうですか」などです。
そして実は創業前の段階で「相談者の方が創業して順調に進むか、苦戦するかわかる」質問があります。
どのような質問だと思われますか?
それは、「現段階でどの程度まで会社の未来を想像できていますか」という質問です。
では、なぜこの質問が重要なのでしょうか。
その答えは創業後に待ち受けている毎日にあります。
創業すると多くの方が実感する事なのですが、想定以上に時間に追われる毎日が待っています。
創業前に想定した通りに物事が進まず、中には創業して1ヵ月程度で「志倉さん、創業しないでサラリーマンをやっておけばよかったよ」と弱音を吐く方もいらっしゃいます。
このような感想は私自身も創業している身ですので、よく理解できます。
一方で、同じように想定した通りに進んでいないにも関わらず、毎日イキイキと経営をしている人がいます。
同じ状況にも関わらず、何が異なるのでしょうか。
私が以前ご支援した方に「学習塾」の創業をされた方がいました。
彼は学習塾の講師経験があり、自信を持って創業したものの、「毎日の授業の準備」「講師募集の作成」「会社の経理業務」などに想定以上に時間がかかり、私から見ても「いつか体調を崩してしまうのではないか」と心配になるほどでした。
しかしながら定期的に相談に乗る際、彼は常にイキイキとしていました。
そのような状態でなぜ彼はイキイキしていられたのでしょうか。
それは彼にはすでに、学習塾が成功し、生徒さん、生徒さんのご両親が喜び、それを見た自身の会社のスタッフさんが笑顔になっている姿が明確に描けていたからです。
実は彼は創業前の段階で「5年後の組織図」をすでに完成させていました。
彼はいつもその組織図を私に見せながら将来を語っていました。
実は組織図は創業者のエンジンなのです。
では、その組織図はどのようにして作成すれば良いのでしょうか。次回はその具体的手順についてお話します。
NPO法人中野中小企業診断士会 志倉康之