-第230回-
採用が難しい企業は応募者数よりも定着率にこだわる
~RJPでミスマッチを防ぐ~①
令和6年3月時点で有効求人倍率は1.28倍、完全失業率は2.6%と、人材採用難の状況が続いています。人材採用が難しい中で、企業側として、どのような姿勢で臨むことが望ましいのでしょうか。今回は、RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前開示)についてご紹介します。
1,まずは「辞めさせない」ことが大事
良い人材を確保することが難しいのであれば、今いる従業員の離職率を下げるしかありません。特に「入社間もない間に離職する早期離職者をどう減らすか」が重要です。
以前より、新卒者の早期離職に関する指標は、いわゆる「7・5・3問題」(中学新卒者の7割、高卒新卒者の5割、大学新卒者の3割が3年以内に離職する)として認識されてきました。
2020年3月に公表されたれた労働政策研究・研修機構の「第2回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査(ヒアリング調査)」によると、「1年以内に正社員として初めての勤務先を離職した理由」の上位は、「人間関係が上手くいかなかった」「労働条件・休日・休暇の条件が良くなかった」「肉体的・精神的に健康を損ねた」「自分がやりたい仕事とは異なる内容であった」「仕事が上手くいかず自信を損ねた」が上位となっています。
新たに職に就いた人が、入社前に抱いていたその企業や職場に対する「理想」と、実際に職場で働きながら経験する「現実」とのギャップに衝撃を受けてしまうことを、リアリティ・ショックといいます。早期離職者は、何らかのリアリティ・ショックを抱えて離職していると考えられます。
2,RJP~リアリズムに基づく採用
私が離職理由を見ていて感じるのは、「そもそも会社側が適切な情報を入社前に開示していないのではないか」ということです。企業のホームページ上の採用欄を見ても、簡単な職務内容や労働条件と、活躍している先輩社員の声(仕事の面白さや職場の魅力が中心)くらいしか公開されていません。まるでバラ色のキャリア人生が待っているかのようです。
現実を踏まえた仕事の様を、その仕事の良いところも、大変なところも、入社前で仕事につく前から、できる限り正確に応募者に伝えることを、RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報の事前開示)といいます。
従来型の情報提供(魅力中心)とRJP型の情報提供(良い面も悪い面も知らせる)を比較した実験でも、後者のほうが離職率が低いという結果が得られています。
次回は、RJPの効果を具体的に見ていきます。
NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元