-第229回-
創業前から意識しておきたい、人手不足解消のコツ(2)
― [アトツギたちの革新的な取組から学ぶ] ―

前回のコラムでは、創業前から意識しておきたい人手不足解消のコツとして、労働基準法の遵守と労働環境改善の重要性についてお伝えしました。
今回は、実際に人手不足解消に成功した「アトツギ」たちの革新的な取組をご紹介します。これらの取組は、創業前から参考にできるヒントが満載です。

1. 業務効率化による負担軽減
~ アプリkintoneで業務改革 ~
家業を継承するために別の業界から実家に戻ったアトツギは、まず業務効率化に取り組みました。具体的には、社内業務のデジタル化を進め、業務アプリ作成のためのクラウドツール「kintone」を導入しました。
kintoneを活用することで、紙ベースでの書類作成や承認フローを廃止し、大幅な業務時間削減を実現しました。ただし、「ノーコードツール」と呼ばれるkintoneでも、何の知識もないところから一人でアプリ制作を行うことは困難です。最初は導入サポートを受けながら時間をかけて取り組んでいきました。社内でできないことは、外部の知見を借りましょう。

2. 働き方改革による従業員のモチベーション向上
~ 休日制度と有給休暇の活用促進 ~
人手不足解消の鍵となるのは、従業員のモチベーション向上です。あるアトツギは、以下の取組を実施しました。

・休日の工夫:
祝日休みのない6月に、会社独自の休日を設定し、従業員のリフレッシュを図っています。
・有給奨励日:
ゴールデンウィーク期間中の狭間の平日、つまり「ここを休みにすれば長期休暇が取れる日」を「有給休暇取得を奨励する日」として設定しています。これは、社内カレンダーにも反映し掲示しています。「いつでも目に見える」ようにすることで、実際の休暇取得を促進しています。制度は、設けただけでは意味がありません。従業員に制度の内容を周知徹底し、積極的に利用できるようにしましょう。

3.デザインや事務所レイアウトの見直し
・制服リニューアル:
製作現場スタッフの制服を見直し、現代的な洗練されたデザインに変更しました。また、作業時以外は着用自由とし、「制服がある方が楽」「私服の方が良い」という両方の声に応えました。このように「従業員の選択肢を増やす」ことで、働きやすさにつなげました。
・事務所レイアウトの見直し:
事務所内の仕切りを取り払い、部署間の交流が進みやすいレイアウトに変更しました。それまでは、事務部門と製作部門の間には扉があり、行き来がしづらい状態でした。仕切りのないワンフロアのオフィスへリニューアルすることで、気軽に会話できる環境が生まれ、情報共有や共同作業がスムーズになりました。

まとめ
「働きやすさ」を確保することは、会社の魅力を向上させ、人材の定着や求職者の増加につながります。アトツギたちの革新的な取組は、創業前から参考にできるヒントが満載です。これらの取組を参考に、自社の状況に合った人手不足解消策を検討しましょう。

NPO法人中野中小企業診断士会 平賀千晴(ひらがちはる)