-第224回-
キャリアは偶然によって形成される
~偶然の機会を上手く捉えて成長する~①
「果たして今の仕事が自分のやりたいことなのか悩んでいる」「自分がやりたいことがわからず、今の仕事に身が入らない」部下の方にこういった方はいませんか?キャリアデザインという考え方が定着し、「自分探し」をする人が増えたように思います。今回はこうした部下へのアドバイスについて考えてみます。
1.計画された偶然
キャリア形成を考える上で重要な理論に「計画された偶発性理論」というものがあります。これは、心理学者のクランボルツによって唱えられた「キャリアは思いがけない出来事に左右される」ということを示したものです。
クランボルツは、学生時代に何を専攻すればよいのか分からず、たまたまテニスを習っていたコーチが心理学の教授であったため心理学を専攻し、その偶然が心理学者としての今の自分につながっているという自身の経験に基づいて、このキャリア理論を打ち立てました。
2.下手に自己実現を意識すると前に進めなくなる
一方で世間では、「自分の強みを明らかにし、将来の自分のキャリアを決めて、それに沿って計画的にステップアップしていこう」という自己実現型のキャリアデザインが大事だとされています。大学等でも早いところでは1年生のときからそう指導するそうです。
しかし、おそらく一般の社会人で、最初の自分の希望どおりに計画的にキャリアを積んでいる人はほとんどいないのではないでしょうか。大卒で入社した人の3割は、入社3年以内で退職し、転職するといわれます。
そもそも社会経験がほとんどない若者に、「どんな仕事がしたいのか」「自分の強みは何か」などわかるはずがありません(30代、40代になってもわからなかったりします)。
自分のやりたいことや強みがはっきりしないのに、自己実現のためのキャリアデザインをしようとするとかなり困ったことになります。「今の仕事は本当にやりたいことなのか?」「自分の適性に合ったものなのか?」などと考え出したら、目の前の与えられている仕事に身が入らなくなり,キャリアにプラスになることが何も得られないという無駄な時間を過ごすことになってしまうからです。
また、変に「自分の道はこれだ!」と早い段階で決め打ちすると、視野を狭くし、本当の自分の才能を見極めることができず、成長の可能性を狭めてしまうことにもなります。
次回は、キャリアを切り開くための偶然の機会の捉え方についてご説明します。
NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元