-第43回-
女性の活躍で経営力をアップさせる(2)
-中小企業で使える取り組みの方向性-
前回は、中小企業こそ女性の活躍推進をすることが採用難の時代に人手不足を解消するアプローチの一つとなりうることに触れました。
とはいえ、実際にどのように取り組めば良いのかイメージが湧きにくいというお話もよく耳にします。そこで今回は、零細企業でも取り組みやすい3つの方向性と事例をご紹介します。
<方向性1:消費者代表として商品・サービス開発に役立てる>
経営者として顧客目線で商品の価値を考えたとしても、実際に商品やサービスに触れる顧客の肉声には敵いません。アルバイトやパートの女性に商品・サービス開発に関わって貰うことで、ヒット商品に繋げる可能性が広がります。
事例:女性向けメニュー開発で売上を倍増させた飲食店
C店は料理店勤務の経験を持つ夫婦が運営するイタリアンレストランです。妻が料理を夫がワインを担当し、味やサービスには自信があります。しかし、来店客数が頭打ちで厳しい状況が続いていました。悩んだ末、アルバイトの女性に「自分が食べたいと思えるメニュー」の提案をして貰ったところ、試食をお願いしたママ友の口コミで新規来店が増加し売上が倍増しました。
<方向性2:ママ友ネットワークでスポット戦力を手に入れる>
ママ友のネットワークは思いがけない戦力の確保に繋がることがあります。例えば、ちらし作成などの事務処理作業は自宅で対応が可能なため、子育て中のママでも働けます。前回に例で挙げた元大企業勤務の女性のように、様々な特技を持つ人材にアプローチできる可能性があるのです。
事例:パート女性の人脈で事業領域を広げた印刷店
D店は企業向けの帳票類を主に行っていた印刷店です。パソコンの普及により、従来のような複写式帳票の需要が減少し、業績が低迷していました。ホームページの作成やちらしの印刷などのニーズはあるものの、対応できる人材が不足し断らざる得ないこともしばしばです。しかし、パート事務員の女性から大手広告代理店で勤務していたママ友を紹介して貰い、自宅でできるデザイン業務を委託することができ、受注できる仕事の幅が広がりました。
<方向性3:業務の効率化に役立てる>
家事と仕事を両立させることが求められる女性に活躍して貰うためには、そのための環境を整えることが重要です。会社の業務を全て棚卸して、短時間でもお願いできる業務を明確にしておくことは、そのまま業務の効率化に繋がります。また、可能な限り権限を委譲していくことは、仕事のやりがいに繋がります。
事例:アルバイトスタッフにマニュアル作成を依頼した弁当店
E店は家族経営の弁当屋です。企業ニーズをうまく捉え、売上を伸ばしてきましたが採用難でシフトが上手く回らなくなってきました。そこで、誰でも作業ができるマニュアル作りをアルバイトスタッフに依頼し、シフトに穴が開きそうな時には友人・知人を紹介して貰うことにしました。マニュアルをスタッフ自身で作成することで作業の無駄に気付き、業務の効率化に繋がりました。
他にも様々な取り組みがありますが、まずは自社で出来るところから取り組んでみることをお勧めします。
例えば、「1時間だけでも勤務OKにする」と決めるだけでも、女性パートの募集ハードルは大きく下がってきます。採用難への対応アプローチの一つとして、女性活躍推進を検討してみてください。
※ワークシェアリングに関しては、社団法人情報サービス産業協会の検討資料が参考になります。→http://www.jisa.or.jp/Portals/0/resource/workshare/whatis/index.htm
NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文