-第200回-
アフターコロナ時代の働き方(1)
-テレワークの活用でワークライフバランスを実現-
このコラムは今回で第200回を迎えます。その間、AIやloTの急速な普及、DXの推進、少子高齢化の進展など社会経済情勢は激変し、とりわけコロナ禍は私たちの生活や働き方に大きな変化をもたらしました。職場ではコロナ対策としての在宅勤務を余儀なくされ、今までにない働き方が長く続きました。コロナ禍が落ち着きをみせる現在、今後の社員の働き方を模索している経営者の方も多いのではないでしょうか。そこで今回はコロナ禍を契機に導入が進んだテレワークの効果的な活用について働き方の観点から考えてみたいと思います。
東京都が2022年11月に実施した「多様な働き方に関する実態調査」では従業員30人以上の企業でみると約60%がテレワークを導入しています。テレワークは主に在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務の3種類ありますが、同調査では9割以上が在宅勤務という結果になっています。また、約75%が終日在宅勤務をしていることがわかりました。終日在宅勤務は通勤時間がないことが利点のひとつですが、就業管理面の利便性という背景もあると考えられます。その一方でテレワークは時間単位、半日単位での利用、時差出勤と組み合わせるとより柔軟な働き方ができます。
事例をみてみましょう。従業員31名の広告デザイン会社では1日の労働時間を変更せずに時差出勤によるテレワークを導入しました。たとえば、始業時刻前に2時間在宅勤務をして出社した場合は2時間早く帰宅することができます。8割を女性社員が占める同社では家庭生活との両立がしやすくなったと好評価です。
次にテレワークをより柔軟な働き方とするためにフレックスタイム制を組み合わせた場合をみていきましょう。現在は多くの企業が通常の労働時間のままで終日在宅勤務を行っていますが、フレックスタイム制を併せて導入すると始業・終業の時刻だけでなく1日の労働時間も自ら決めることができるようになります。フレックスタイム制は1日の所定労働時間に縛られることなく、3か月以内の期間を定め、この期間の法定労働時間の範囲で勤務するものです。テレワークにこの制度を組み合わせれば、働きやすい時間帯に労働時間を効率的に設定することができ、業務の効率化、仕事と生活の調和を図りやすい職場となり、定着率の向上、採用面での優位性など企業にとってもメリットがあります。
次回はテレワークとフレックスタイム制、年次有給休暇を組み合わせた事例をみながら、導入や運用のポイントをみていきましょう。
NPO法人中野中小企業診断士会 豊岡 来実(とよおか くるみ)
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