-第37回-
資金調達(借り入れ)について(2)
〜担保・保証がなくても借り入れができるチャンス〜
金融機関から借り入れする場合、多くの場合は、担保や保証が必要とされてきました。
前回ご紹介しました、中野区の融資の支援制度も、信用保証協会の保証金が必要となることが一般的です、とご説明しました。
一方で、最近、金融機関の間では、将来性のある会社については担保や保証にたよらないで融資をすすめよう、という動きがでてきています。
新聞のインタビュー記事などでも、地方銀行のトップの方が、「将来の収益が見込める場合には無担保・無保証で積極的に融資したい」といったコメントをしています。担保・保証にたよらない融資は、会社の事業の将来性を金融機関が判断し、事業に見込みがあると判断し融資を行います。こうした融資は事業性評価融資と呼ばれています。
担保や保証なしで融資が行われることについては、国も積極的に後押しをしています。
金融庁は、借り手の事業者向けに「円滑な資金供給の促進に向けて」
http://www.fsa.go.jp/news/27/ginkou/20150730-1/01.pdf
という冊子を作り事例をあげて紹介しています。この冊子のなかでは、アパレルのオンラインショップなどを経営している創業間もない企業の事例が紹介されています。
ビジネスモデルの特長や経営陣の事業に対する取り組みが評価されて銀行からの融資を受けることができたそうです。
事業に対する取り組みを評価してもらうには、最近、経済産業省が、公表したローカルベンチマークというツール(道具)が役に立ちます。(以下のリンクご参照ください)
http://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/
ローカルベンチマークは、企業の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行うツール(道具)として、経営者と金融機関等が、双方同じ目線で対話を行うための道具として活用されることを目的に作られました。
ローカルベンチマークでは、決算書類の数値をエクセルシートに入力すると全国の他の会社のとの比較ができるようになっています。さらに非財務ヒアリングシートとして、①経営者、②(取引先などの)関係者、③事業、④内部管理体制という4つの点に着目し事業の内容をわかりやすく伝える仕組みをエクセルシートにして紹介しています。
たとえば、①経営者への着目、という項目は、⑴経営者自身についてのこと、⑵経営ビジョン、⑶経営理念、⑷後継者の有無、についてシートに記入します。③事業への着目、という項目は、⑴会社・事業の沿革、⑵技術力、販売力の強み、⑶技術力、販売力の弱み、などについて、シートに書き出すようになっています。書き出す内容のチェックポイントが示されていて具体的に書きやすいように、利用マニュアルも準備されています。 (以下のリンクの利用マニュアル 6ページに記入例があります)
http://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/manual.pdf
金融機関との付き合いのなかで、こうしたツールを活用し、財務状況や決算書類の数字だけで見えない会社の強みを積極的に伝える努力がみなさんの会社の評価につながります。
今は、金利が大変低くなっていて借り入れをするには有利な状況です。それに加えて、金融機関が担保や保証なしでも融資をしよう、という気になってきていることは、ビジネス拡大を考えている経営者のみなさんにとっては力強い追い風です。金融機関に事業内容の強みをよくわかってもらい、大きなチャンスに結びつけてください。
NPO法人中野中小企業診断士会 山口尚彦