-第31回-
事業アイデア発想のコツ(2)
~ アイデアの種はお客様の不満の中にあり ~
前回は「起業家にとっての事業アイデアの醍醐味」「事業アイデアを発想する方法」についてお話をしました。今回は「お客様の不満に焦点をあてる方法」を軸にお知らせします。
1.事業アイデアの多くはお客様の不満から生まれる
実は「世の中のニーズ」には
①「このようなサービス(商品)があったら嬉しいなぁ」という希望のニーズ
②「この不満を解消してくれるサービス(商品)が無いものか」という不満解消のニーズ
の2通りの側面が存在します。この考え方を我々、事業アイデア提供者側から考えると
①は「お客様の人生にプラスの部分を提供するアイデア」
②は「お客様の人生のマイナスの部分を解消するアイデア」
と考えることが出来ます。ではどちらのニーズに対応するのが望ましいでしょうか?
理解度を高めるために、自分のことに置き換えてみましょう。あなたが経営者だと仮定し、以下2通りの提案を受けた場合、どちらの提案がより魅力的(行動を起こしたいと感じる)でしょうか。
①このサービスを受ければ売上が10%上昇します
②このサービスを受けないと売上が10%損したままです
実際に行われた実験では多くの回答者が②を選択しています。この実験から言えることは、人間は「今の自分の不満を解消することに関して興味を示しやすい」ということであり、実際に多くのサービスが不満から生まれています。
<1000円カットQBハウスの事例>
今では有名になった「1000円10分のクイックヘアカット」のQBハウスですが、事業アイデアは創業者自身が「行きつけのホテル内の理容室で髪を切ってもらっていたときに、タオルを取りに行ったり、ホウキを取りに行ったりと、ムダな時間が多いと感じた。このムダな時間のコストもわたしが支払っており、これを改善できないかと考えた」ことから生まれています。まさに自身の不満を事業アイデアに育て上げたことから始まったサービスです。
2.どのようにしてお客様の不満を集めるか
では、不満の情報をどう集めれば良いのでしょうか。オススメの方法をお伝えします。
それは「自分の生活の中から見つける」ということです。具体的には、日々生活をしている中で不満に感じる時があれば、すぐに「不満ノート」にメモをしておくようにします。
・出張の際にスーツケースが揺れで動いてしまう、何とかならないか
(エース株式会社が揺れる乗り物の中でも動かないスーツケース「プロテカ」を開発)
・真夏だと出勤中にYシャツが汗でベタベタになってしまう
(小林製菓株式会社が汗をかけばかくほど涼しくなる商品「シャツクール」を開発)
など、日々の生活で感じたことがあればすぐに「不満ノート」にメモをする習慣を身につけます。
私自身も「不満ノート」を実施していますが毎日続けると、2~3ヵ月でノート1冊分の分量が溜まります。そして事業を発想する際は「不満ノート」を見返しつつ、
「どんなサービスがあればこの不満は解消されるのだろうか」「この不満解消に対応している企業はあるのだろうか」という視点でアイデアを深めます。不満ノートの内容をもとに数名の仲間とディスカッションを実施することも効果が高く、オススメです。
NPO法人中野中小企業診断士会 志倉康之