-第28回-
クラウド会計で経理業務の効率化(1)
~取引入力と仕訳の自動化~

日々の取引情報の入力や月末処理、通帳記帳など、お金の管理が重要なのはわかっていても、本業がいそがしくて手が回らない。と、嘆いている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?今回は、これらの経理業務を効率化することができる、クラウド会計ソフトについて紹介していきます。特にこれから会計ソフトを選択するスタートアップ企業には、初期費用が不要なことなどコスト的なメリットもあるため、導入検討することをお勧めします。

1.クラウド会計とは
クラウド会計とは、会計ソフトの機能(お金の収支管理や決算帳票出力など)を、インターネット上のクラウドサービス※1として提供されているものを示します。
インターネットにつながれば場所を選ばす、どこでも利用できること、スマホやMAC端末でも利用可能なこと、データのバックアップが自動で行われることなど、クラウドサービスならではの利点があります。ただし、クラウド(インターネット環境)に自社の会計データを保存することになりますので会社のセキュリティポリシーに抵触しないかの確認や、使用するパソコンのウイルス対策は万全にしておく必要があります。

2.クラウド会計の機能
インターネットで『クラウド会計』と検索すると、複数の会社がサービス提供を行っていることがわかります。会社によりサービス提供機能に若干差異はありますが、共通的に提供されている主要な機能について以下に説明します。

①取引明細の自動取得と自動仕訳
事前に情報登録しておくことで、利用している各金融機関やクレジットカードの入出金データを自動で取得することができ、取引データの手入力を行う手間を大幅に省くことができます。また、自動取得した取引データに適用する勘定科目を提案してくれます。

②ソフトウェアの自動バージョンアップ
従来の会計ソフトでは、税制制度の更新(消費税、法人税の税率変更、固定資産の償却率変更、会社法改正など)に伴うバージョンアップを実施する必要がありましたが、クラウド会計では、これらの変更対応や各種機能追加は自動的に実施されるため、利用者側としては、意識する必要がなくなります。また、通常は利用料金に含まれているため、追加費用も発生しません。

③複数アカウントによる情報共有
データがすべてクラウドに保存されているため、関係者(税理士、金融機関担当者、コンサルタント、など)との情報共有が簡単にリアルタイムに行えるようになります。

〈クラウド会計を利用した経理作業の効率化事例〉
インターネット通信販売を行っているA社(社員2名)では、経理作業も日々業務の終わった後、社長が兼任していました。銀行口座はインターネットバンキングを利用しており、顧客から入金確認等を都度、銀行で通帳記帳をする必要はありませんでしたが、複数の口座に分散しており、情報を管理するのが大変でした。
クラウド会計を導入した後は、複数の銀行口座情報を自動取得できるため、毎日1時間はかかっていた取引情報入力の手間がなくなり、PC画面上で確認するだけと大幅な時間短縮につなげることができました。

次回は、クラウド会計のレポート機能を利用した経営状態の見える化についてお伝えしていきます。

※1:クラウドサービス
クラウドサービスは、従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で、サービスとして利用者に提供するものです。
総務省HPより抜粋( http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/basic/service/13.html )

NPO法人中野中小企業診断士会 田村亘

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