-第172回-
顧客も気がついていないニーズを見つける方法(1)
~ デプス・インタビューで深層心理に迫る ~

画期的な新製品や新サービスを開発するためには、顧客に「どうして欲しいですか」「どんな商品があればいいですか」とニーズを尋ねるのではなく、開発側が、顧客が潜在的に抱えるニーズを見つける必要があります。デプス・インタビューはそのための手法です。デプス・インタビューの手順について説明します。

1.ニーズは「訊く」のではなく「見つける」

画期的な新製品や新サービスを開発する、売上がピークを過ぎた商品・サービスをリフレッシュさせるためには、新たな使い方(価値)を提案することが有効です。その際に、よく用いられるのが「顧客にニーズを尋ねる」ことです。たとえば、「この商品に何か不満がありますか?」「この商品をなぜ買い続けているのですか?」「この商品がこうなったらいいなと思うポイントはありますか?」といったことをインタビューの被験者に尋ねます。

しかしながらそこから得られた情報は、新たな用途や価値の提案に結びつくことはあまりありません。なぜなら、被験者である一般ユーザーは素人であり、「値段を安くして欲しい」「使い勝手を良くして欲しい」といったありきたりな答えしか出てこないからです。

人の意識には顕在意識と潜在意識があります。このうち潜在意識が占める割合は95%とも言われています。質問で答えられる情報は、被験者の顕在意識にもとづくものであり、すでに気がついてほとんどの場合は言葉で発せられているものです。よって、あまり目新しいものではありません。

これまでにないような新たな用途や価値につながる情報を得るためには、顧客もはっきりと分かっていない潜在意識を探る必要があります。

2.顧客の深層心理を探る

デプス・インタビューとは、1人の対象者に対して価値観や利用・購買動機について深くインタビューするというものです。

一般的なグループインタビューだと「対象者1人1人から深い情報が得られない」「他の人の意見や視線が気になって本音が引き出しにくい」といったデメリットがあります。深い本音の情報を引き出すためには、1人1人と時間をかけて信頼関係を築く必要があります。
もっともそれだけ時間がかかるのも事実で、標準的には1人あたり1時間半程度、サンプル数10件程度を1ヶ月程度かけて収集します。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元
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