-第151回-
顧客ライフサイクルマネジメントで顧客とともに成長する(2)
-顧客のニーズ、好み、所得の変化に沿ってラインナップを揃える-
前回、「最初に低価格のエントリーモデルを買ってもらって自社に取り込み、将来的に高額の高利益な製品やサービスに誘導する」顧客ライフサイクルマネジメントについて、ご紹介しました。今回は、顧客ライフサイクルマネジメントを含めたビジネスモデルの条件について、ご説明します。
1.顧客ライフサイクルマネジメントのメリット
顧客ライフサイクルマネジメントのメリットは、2つあります。
まず、このビジネスモデルでは、顧客の人生の若い(早い)段階で製品やサービスを通じて顧客を捕捉し、その後、その顧客の成長や成熟に従って新たな製品・サービスへと顧客をシフトさせるため、新規顧客の獲得のためのマーケティング費用を大節約することができます。
次に顧客の年齢が進むにつれて所得が増え、製品・サービスへの理解も進みますので、顧客としてもより高度で高価な商品・サービスを欲しがるようになります。よって、企業側としては、高価な製品・サービスを売ることができるようになり、収益性も増大していきます。
2.顧客ライフサイクルマネジメントの条件
顧客ライフサイクルの前半では顧客の獲得が優先されるため、場合によっては、利益度外視の価格で販売して顧客のハードルをできるだけ下げる一方で、ライフサイクル後半では顧客が離脱しないように努めながら利益率を上げていきます。そのためにはフルラインナップの品揃えをするとともに、顧客を何らかの慣れや習慣によって囲い込むための仕組みや、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)によって顧客の成長を把握するシステムが必要になります。
3.有効なビジネスモデルの条件
多くの事業者の方は、「すべての顧客から、すべての商品で、直ちに儲ける」ことを考えがちですが、ユニークなビジネスは、どこかにメリハリがあります。
たとえばあえて儲けない顧客や儲けない商品・サービスを設定し、そこから儲ける顧客や儲ける商品・サービスに誘導したり、顧客からの短期的な利益ではなく長期的な利益(顧客生涯価値)の最大化を図ったりします。つまり「損して得する」という発想です。顧客ライフサイクルマネジメントは、顧客、利益、時間軸のメリハリをつけたビジネスモデルと言えます。
予備校では、中学受験や高校受験のクラスはほとんど利益がなく、将来的に高収益の大学受験クラスや社会人教育コースに取り組むための布石として設けているとも言います。
「損して得する」という発想はどのようなビジネスでも応用できますので、結果的により多くの儲けが出るよう、ぜひご自身のビジネスを見直してみてください。
NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元