-第150回-
顧客ライフサイクルマネジメントで顧客とともに成長する(1)
-顧客のニーズ、好み、所得の変化に沿ってラインナップを揃える-

1.顧客を育てて高い商品を買ってもらう

ビジネスモデルの1つとして、顧客ライフサイクルマネジメントというものがあります。これは、顧客の成長にともなうニーズ、好み、所得の変化にごとに、提供する商品・サービスのラインナップを揃えるというものです。
 目的は、最初に低価格のエントリーモデルを買ってもらって自社に取り込み、将来的に高額の高利益な製品やサービスに誘導することにあります。単にいろいろな顧客層を捕まえるために複数の商品・サービスを用意するというのではなく、同じ顧客をランクアップさせるために商品ラインナップを揃えるということです。

2.顧客ライフサイクルマネジメントの例

年齢や所得の上昇に応じた顧客ライフサイクルマネジメントの例としては、次のようなものがあります。
 自動車メーカーでは、「独身・新入社員(コンパクトカー、あるいはエントリーカー)⇒家族持ち・中堅(ファミリーカー)⇒エグゼクティブ(高級車)」というようなランクアップを想定していると考えられます。
 ベネッセでは、幼稚園児(こどもチャレンジ)、小学生(進研ゼミ小学講座)、中学生(進研ゼミ中学講座)というランクアップモデルを設定しています。
 スウォッチグループでは、ベーシック・ミドル・ハイ・プレステージの4つのレンジのブランドを持っており、上位のグレードへの誘導を行っています。
 また嗜好やニーズの変化に沿った顧客ライフサイクルマネジメントとしては、カメラ、スポーツ用品、オーディオなど趣味関連の商品が挙げられます。まずはエントリー商品を用意して趣味の世界へ顧客を誘い込み、その世界を深く知り、製品の使用に習熟するに従って上位製品へ誘導するというものです。子供の頃は、安価なミニテニスラケットで親しんでもらい、中級モデル、上級モデルへとグレードアップを図っていくといったパターンです。
 顧客ライフサイクルマネジメントの考え方は、法人相手のビジネスでも成り立ちます。たとえば、多くの監査法人では、起業直後の会社に対してベンチャー支援サービスを行い、その後、上場支援サービスを経て監査業務へと顧客企業を誘導しています。

 次回は、顧客ライフサイクルマネジメントを含めたビジネスモデルの条件について、ご説明します。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元