-第78回-
金融機関との関係を劇的に改善する経営改善計画(2)
-社員のやる氣を引き出す経営改善計画書-

前回は、経営改善計画書が金融機関とのコミュニケーション改善に役立ち、資金調達を容易にすることをお伝えしました。

『リスケジュール』は資金調達では無いという方もいらっしゃいますが、毎月100万円の返済をしていたとして返済原資となる利益を稼ぎ出すことを考えれば、立派な資金調達手段の一つです。返済を一定期間止めることで、返済に充てていたキャッシュを経営改善に向けた投資や運転資金に回すことができます。追加融資を受けることだけでなく、返済を止めることも視野に入れてみてください。

では、経営改善計画書を作るためにはどうしたら良いでしょうか。普段から経営計画書を作成していない場合には手を付けにくいこともあるかと思いますので、専門家を活用するのが早道です。

中野区産業振興センター 相談窓口
http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/162000/d014366.html
中野区専門家派遣制度 どこでも出張相談
http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/162000/d004635.html
東京商工会議所 エキスパートバンク
https://www.tokyo-cci.or.jp/soudan/expert/

いずれも無料で専門家のサポートを受けることができます。経営計画書作成に手を付けるきっかけとしてご利用ください。

自分で取り組んでみようという方は、以下の3つのポイントを留意してみてください。それだけでも金融機関との関係改善に大きな効果が期待できます。

1.経営者の経営理念や夢を明確にする
2.社員全員を巻き込む
3.行動することを具体的にする

特に、社員全員を巻き込むことが重要です。厳しい経営状況は隠しておきたい気持ちを抑え、経営改善計画作成に社員を参画させるのです。その中で、経営理念や経営者の夢を語り社員に伝えていきます。

(事例)社員全員のパワーで難局を乗り切ったC社
C社は、社員数8名の機器メンテナンスサービス業です。主力の取引先をライバルに取られ、一気に収益が悪化しました。当初、経営者自身で経営改善計画書を作ろうとしていましたが中小企業診断士のサポートを受けて社員全員で取り組むことになりました。社員一人一人と面談し、会社の仕事を通じて実現したい夢を明確にしました。退職する人も出ましたが、残った社員自らが具体的にどう行動するかを計画に盛り込んだことで、やる氣に火がつきました。事務スタッフまで営業活動に参画し、受注の穴を埋めることに成功したのです。

C社の事例のように、経営改善計画書は作成のプロセスそのものが社員とのコミュニケーションを密にする機会になります。そして、社員個人個人の夢と重ね合わせることで、社員のやる氣を引き出す強力なツールになるのです。

経営改善の必要を感じていない方も含めて、もし経営計画書を作成していないのであれば、ぜひ作成にチャレンジしてみてください。

NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文