-第73回-
クラウドと無料ツールを徹底活用!お金をかけない創業 (1)
― クラウドを賢く使ってコストダウンと生産性向上を両立 ―
創業時は、事務所や店舗、備品、登記や許認可取得など、何かと手間とコストがかかるものです。その中で、種類も増えてきたクラウドサービスをうまく活用すれば、創業時の設備投資や準備のハードルを一気に下げることができます。中には、無料で利用できるツールもあるので、賢く使ってコストダウンと生産性向上を両立した創業を目指しましょう。
1.事例で見る、コストだけではないクラウドサービスのメリット
(1)専門知識が無くてもすぐに始められ、法改正にも対応
飲食店を創業したAさんは、料理の腕前は誰にも負けない自信があるものの、経理の知識はゼロ。飲食店とはいえ、経営者が売上や利益を把握しないとうまくいかないと周囲の創業経験者からアドバイスされ、税理士のサポートを受けてクラウド会計を利用しました。毎日閉店後にエクセルで現金出納帳をつけて、休日にクラウド会計にアップロード。客単価や売上をタイムリーに把握できるので、食材の変更やセットメニューの見直しなどをタイムリーに行って開業から順調に売上を伸ばしています。また、2019年10月に予定されている消費税改正もクラウド会計なら事業者側が対応してくれるので、ITや法制度の専門知識が無くても安心です。
(2)事業展開に合わせて拡張できる
Bさんは美容室を創業するに際して、クラウド会計とクラウド顧客管理サービスを利用開始しました。順調に業績が伸びてきたため、創業3年目に店舗を増やすと決断。クラウドサービスを利用していたために、店舗を増やしてもITについては大きな設備投資が必要ありませんでした。しかも顧客情報を店舗間で共有できるため、従業員が移動してもお客様の情報をそのまま利用でき、サービス品質の向上につながっています。
2.クラウドサービスを選ぶ際の主な注意点
(1)サービス事業者の信頼度とデータダウンロード
クラウドサービスの弱点の一つは、事業者がサービス停止すると使えなくなってしまう点。この点は利用者側ではコントロールできないため、クラウドサービスを選択する際は、会社概要やサービスの実績、利用者などから、サービス事業者の信頼度をチェックしましょう。また、自分のデータが簡単にダウンロードできないサービスもあるので、万が一のサービス停止の場合でも事業継続できるように、データがダウンロードできるかどうかも確認が必要です。
(2)オプションや連携サービスの有無
クラウドサービスは、多くのユーザに同一の機能を提供することでコストダウンを図るケースが多いため、自社のニーズに合わせて機能を追加・変更したいと思ってもカスタマイズできないのが一般的です。導入当初は十分な仕様だったが、業務拡大に従って新たな機能が必要になることもあるので、オプションや他のサービスとの連携等で機能追加できるかどうかも選択する際のポイントです。
今回は、創業時に活用したいクラウドサービスのメリットと注意点を見てきました。創業時には、クラウドやITなどのツールの機能やコストに目が行きがちですが、ITツールの導入の本来の目的は経営の見える化や業務効率の向上です。創業計画や製品戦略をよく検討したうえで、自社の戦略やビジネスモデルに適したクラウドサービスを選ぶことが重要です。次回は、業種や業務別のオススメサービスをご紹介します。
NPO法人中野中小企業診断士会 木佐谷 康
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