-第235回-
自社商品が選ばれるためのストーリーブランディングの考え方
-成長するお店が実践する3つのポイントー②
商品、企業のブランディングを実施する際に「物語性」を重視した考え方をストーリーマーケティングといいます。前回は、企業がブランディングや商品の販売促進で物語を使うことの有効性についてご説明しました。今回は、ストーリーマーケティングの方法についてご説明します。
1.企業の物語の活用の方向性
企業がマーケティングに物語を活用する方向性には、次の2つが考えられます。
〇企業ブランディング
代表者や従業員を「物語の主人公」に位置づけ、志に向かって立ち向かっていくことでファンを生み出していく。
〇商品・サービスの販売の場合
顧客(利用者)を「物語の主人公」に位置づけ、その商品・サービスを使うことで問題が解決することを知ってもらう。
2.物語を創る際の前提条件
物語を作る際には、次の3つが必要となります。
・パーパス(理念)
・顧客への提供価値、独自性(差別化)のポイント
・象徴的なエピソード
パーパスとは、企業の社会的な存在価値や社会的意義のことで、「自社は何のために存在するのか」「その事業をやる理由は何か」といった根源的な問いの答えとなるものです。人々は企業の社会性に共感を感じます。
ビジネスの存在意義を一言で言えば、「顧客への価値の提供」です。自社の顧客への価値を見直します。また独自性があればエピソードにつながりやすく、話題にもなります。
3.物語の構成
物語の構成は、基本的には次のようになります。
「何らかの目的を持つ主人公が、それを達成する前に何らかの障害にぶち当たる。主人公が絶望の淵に立たされた時、外部の助けが現れて支援を授け、行動を促す。その行動により、主人公は失敗を回避して、成功に至る」
商品・サービスの場合は、外部の助けは「自社商品・サービス」となります。企業や代表者の物語の場合は、外部のアドバイザーや家族、友人などがあたるでしょう。
4.マーケティングで有効な物語の条件
マーケティングで有効な物語の条件としては、次のようなものがあります。物語ができたら、それが印象に残りやすいか外部の方を交えてチェックするとよいでしょう。複数案を作ってみて、その中から投票でよいものを選ぶというのも有効です。
① 共感度
その物語に共感するかどうか?
② 伝播度
その物語を人と共有したり、報道したくなるか?
③ 社会福利度
その物語は社会を良くするものだと思えるか?
④ ブランド関与度
その物語に企業は正当性を持って関与しているか?
⑤ 認識変容度
その物語は読み手の何らかの認識を変えるものか?
どんな企業にも外から見れば興味をそそるようなエピソードはあるものです。自社には特徴的なものはないと決めつけず、とりあえず外部の方に話をしてみることから始めてみるとよいでしょう。
NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元