-第234回-
自社商品が選ばれるためのストーリーブランディングの考え方
-成長するお店が実践する3つのポイントー①
消費者は、物語に共感し、感動します。商品、企業のブランディングを実施する際に「物語性」を重視した考え方をストーリーマーケティングといいます。今回は、ストーリーマーケティングの考え方についてご説明します。
1.物語があったほうが印象に残る
早速ですが、次の2つの文章のうち、どちらが印象に残るでしょうか。
(1)ブランドXは、耐久性や防水性に優れ、古くから世界中で愛用されています。
(2)1912年、あのタイタニック号の事故の際に、ブランドXのトランクにつかまり、命が助かった人もいたといわれます。
さらに、沈没から数十年後、タイタニック号の船室から遺品が引き上げられたとき、ブランドXのトランクの中身は水に濡れず、当時のままの姿で残っていた、という逸話まで残されているのです。
ブランドXはどなたもご存じのあのブランドです。もちろん(2)のほうが印象に残ったでしょう。このブランドXのエピソードは事実ではなく単なる都市伝説なのですが、世界中の人々の記憶に残っています。
このように自社や商品について何らかの物語(エピソード)があったほうが(もちろん事実に基づくものですが)、顧客の印象に残り、選ばれやすくなります。
2.物語の効果
物語には、次のような特徴があります。
・物語に感情を揺さぶられる(自分事化する)。
・物語には真実味や信憑性がある。
・物語は記憶に残る。
・受け手は物語の論理を再解釈するため、物語にコミットするようになる。
・物語は語り手の主観的な信念や価値観によるものであり、反論しにくい。
上記の特徴から、物語を使ったマーケティングには企業側にとって次のような効果があります。
〇創作プロセスにおいて
・ターゲットユーザーに対する理解が深まる
・ブランドの深層の意味(インサイト)が浮かび上がる
・プランニングそのものの充実感がある
〇創作された物語の活用において
・マーケター同士のブランド理解の共通項が広がる
・消費者に対してブランド価値を伝えやすくなる
・消費者とのエンゲージメントが生まれる
・口コミを生みやすくなる
数多くの競合の中から選ばれるには、特別な理由が必要で、その特別な理由になりえるのが物語です。著名なマーケティング作家であるセス・ゴーディン氏は、「マーケターは優れた物語の語り部であれ」といっています。
次回は、物語の創り方を具体的に見ていきます。
NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元