-第232回-
もう一つの人手確保の仕方(1)
~フリーランスを活用した企業力の向上策~
「働き方改革」が提唱されてから7年が経過しました。従来、経営陣から見過ごされてきた、あるいは軽視、あるいは避けていた、「組織力、人材力」を活かした経営が当たり前の社会になってきました。
働き方改革は、残業の削減や年次有給休暇の取得促進によりワークライフバランスをとることのみにフォーカスされがちです。しかし、本来の目的は、残業減少・有給取得の増加等を通じて働きやすい環境を整え、企業が人事制度の構築や透明なコミュニケーションの風土を作ることにより従業員の生産性を高めることにより利益を増大させ、賃金をアップにつなげ、企業の成長の原動力とすることです。
昨年来の継続的なベースアップは、資材価格の上昇に加え、このような考え方を実現しようとする機運が高まった結果ともいえます。
また、働き方改革は雇用の多様性とともに、就労の多様性、ダイバーシティ化を進展させました。
企業に勤める働き方に加え、会社を設立して経営者となる働き方、個人事業主として業務を受託し完遂する働き方です。そして今、卒業して間もなく個人事業主として起業される方が増加しています。また、企業も個人事業主を活用する機会が増加しています。
さて、「フリーランス」とは個人事業主をして独立された方で、企業に勤務することなく、自分の意思で業務を受託し活動する方を指します。すなわち、業務を受託する側は自らのライフワークの実現が可能になり、業務を委託する側は仕様書に沿って完成品を受け取るのみで済み、かつ社会保険料も不要で、お互いにとってメリットのある契約形態なのです。
① 企業のメリット
人材不足の解消と人材育成
即戦力による従業員の負担緩和
社会保険料等コストの削減
スピーディーな対応が可能になる
小さな案件や短期間での業務が可能
② 企業のデメリット
仕様書に基づいた働き方なので柔軟な変更指示ができない
業務遂行過程がみえない
期待とおりの完成品ができるとは限らない
さて、このようにとても有用性のある人材活用方法なのですが、雇用との違いは以下の通りです。
① 業務委託契約では、フリーランスと企業との間での従属関係はなく、日常的な指示命令もありません。
② 両社は契約関係なので、委託者側は、仕様書等に基づき業務の内容を明確に規定することが必要となります。
③ 受託者側は、仕様書等に基づいて、製品・サービスを提供する義務が発生し、完成品を届けた時点で契約を履行したことになります。
④ ついては、契約後の継続的な指示・命令は発生しない。継続的・日常的に指示命令が発生する場合は、雇用が必要で、業務委託契約で実施した場合は「偽装請負」の可能性が疑われます。
⑤ 同じく、受託業務上、特に必要がある場合ではないのに、出社時間が決められ、時間単位の報酬となっている場合も同じく疑われます。例えば、結婚式に運営を委託した場合は開始時間が指定され、時間単位での報酬であっても合理的とされますが、ホームページ作成業務を開始時間を指定し、時間単位での報酬となる場合は合理性に疑念が発生します。
次回は、フリーランス新法の具体的な内容を見ていきます。
NPO法人中野中小企業診断士会 谷進二(たにしんじ)