-第194回-
定年後のセカンドキャリアを考える
-シニア起業に向けた「副業・兼業」の活用(1)-

今回は、シニア起業をお考えの皆様にメルマガをお届け致します。60歳定年後の自由時間は、就職してからの通勤と仕事の合計時間とほぼ同じとの試算があります。長いセカンドキャリア期間を充実させるため、前半ではシニア起業の特徴と課題、後半は最近増えてきた「副業・兼業」の活用を見ていきたいと思います。

〇シニア起業はバラエティ豊か
中野区内の、副業・兼業制度を導入されている食料品製造会社さんで、副業についてお話を伺いました。仕事で培った商品知識を基に本の執筆をされている方、仕事での体験を基に商品のディスプレイや店舗作りのサービスをネットで販売されている方、ずっと趣味で続けてきた柔道の道場を経営される方など、本当に多彩な活動をしておられました。
定年頃になると住宅ローンや教育費に目途がついて、起業に伴う家計へのリスクが軽減され、チャレンジがしやすくなります。収入を得る目的はもちろんですが、趣味を活かした起業をされる方もいて、まさにシニア起業はバラエティ豊かという特徴があります。
ところで、60代が起業に関心をもったきっかけの上位に、「事業化できるアイデアを思い付いた」があります。自分アイデアを大事に練り上げて、具体化させているのですね。

〇ヒト・モノ・カネと、シニア起業の課題
 ビジネスに必要なヒト・モノ・カネ。起業する時には、どの世代でもこれらを踏まえて、しっかり事業計画書を作ることが必要です。加えて、シニア起業には、別の課題もあります。新たな活動の場では、必要なスキルや能力が今までと異なるため、経験にとらわれすぎるとスムーズに行かないことが出てきます。シニア起業の課題をいくつか見ていきましょう。
①ワン・オペ能力
これはあるよ、とお叱りを受けそうですが、これまで管理職だった方も指示する相手がいなくなります。会社なら専任の担当者が行っていたバックオフィス業務も、自分で行わなければなりません。特に重要なのは、情報リテラシーです。ビジネスに必要なアプリケーションソフトやITツールを使いこなすことは必須条件です。
②ネットワーク作り
これは自分の得意分野と思っておられる方、会社のネットワークは縦のネットワークです。起業した後に作っていくのは、横のネットワークです。今までの価値観から離れて、人に共感し受容しなければなりません。高い役職にいた人は、特に注意が必要です。自覚のないまま、周囲を会社のスタッフのように接すると摩擦がおきてしまいます。
③地域に根ざす、家族との関係を見直す
 シニア起業の場である地元地域では、商店街の人が子供たちの通学の見守りをするなど、仕事と生活が混じり、助け合う暮らしをしています。オフィス街で仕事をしてきた人は、理解や共感に時間がかかることがあります。また、起業で家庭が職場になると、今までの家庭内の役割に変化が出てきます。家族の負荷が増すことはないか、どこまで協力してもらうのか、よく考えておかないといけませんね。

次回は、副業・兼業の活用を考えていきましょう。

NPO法人中野中小企業診断士会 阿世賀和子(あせが)