-第213回-
生産性を高める変形労働時間制度の導入の仕方(2)
―まずは仕事とスキルの棚卸しから始めてみよう―

後半は、労働時間制度の特性と、自社に合った制度の導入を検討します。変形労働時間制は忙しい時に法定労働時を超えて働き、暇な時には少なく働く設定ができるので、労使双方にメリットがありますが、制度運用には手間がかかります。仕事のそのものの見直しと合わせて、自社の最適を考えましょう。

〇 労働時間制度の基本
 法定労働時間は1日8時間、週40時間(特例措置対象事業場は44時間)です。この労働時間を超えるには、従業員と「時間外労働協定」(36協定)を結んで、労働基準監督署への届出が必要です。
 変形労働時間制は、労使協定や就業規則など必要な手続きを行うことで、例えば一定期間内の平均が1週40(44)時間を超えなければ、割増賃金なく特定の日や週に法定労働時間を超えて働いてもらえるというもので、(1)1ヶ月単位、(2)1年単位、(3)1週間単位があります。フレックスタイム制では、始業・終業時刻を労働者が自主的に決定することができます。担当している仕事の種類や担当者ごとに、制度の利用を選択することができます。 

〇 変形労働時間制
 1ヶ月単位の労働時間制は、例えば月末は忙しいけれど、月初は余裕がある会社なら、月末の労働時間を法定労働時間より長くする、通常休みにしている土曜日を勤務日にする、などの措置が可能になります。代わりに月初の労働時間を減らすなどして、平均所定労働時間が法定の枠内に収まるようにします。
 1年単位の変形労働時間制は、例えば学校教育に関連した事業で、子供が夏休みや冬休みの期間は忙しいけれど、その他の期間は余裕があるといった事業にメリットがあります。対象期間は、1ケ月以上1年以内であれば、任意の長さに設定できます。
 1週間単位の変形労働時間制は、30人未満の小売業、旅館、飲食店の事業で、1週間の日ごとの労働時間を弾力的に定めることができる制度です。

〇 法定労働時間が週44時間となる「特例措置対象事業場」とは
 対象となるのは、卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業、映画の映写、演劇、その他興行の事業、病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業、旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業です。事業場の規模(人数)は、企業全体ではなく、工場、支店、営業所等の個々の事業場の規模をいいます。変形労働時間制では、1ヶ月変形と1ヶ月フレックスタイム制のみこの特例が適用されます。1年変形や1週間変形では特例はなく、週40時間なので注意が必要です。また、1日の法定労働時間8時間はそのままですので、週休2日制とする場合は変形労働時間制をとる必要があります。導入するためには、雇用契約書や就業規則に定めが必要です。

 制度導入には試行期間を設けて、しっかり運用できるように慎重を期して行い、生産性向上につなげましょう。今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

NPO法人中野中小企業診断士会 阿世賀和子(あせが)
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