-第210回-
組織の中で誰もが気兼ねなく自分の意見を言える環境をつくる(1)
- 社員の心理的安全を確保する -

経営者であれば、誰もが、組織の中で誰もが気兼ねなく自分の意見を言える環境が必要だと言います。しかしながら、知らず知らずのうちに、社員が自由に意見を言えなくなる雰囲気となっている場合も多いです。
企業やチームの中で、「対人リスクを恐れずに思っていることを気兼ねなく発言できる、話し合える状態」を心理的安全と言います。ハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授がその著書、「チームが機能するとはどういうことか」(英治出版)で主張して以来、日本でもすっかり定着した感があります。今回は、心理的安全をどう確保するかについて、2回に分けて取り上げます。

1.組織の4つの状態

心理的安全と、組織(あるいは経営者や管理者)が社員に求める責任(業務目標)により、組織の状態は次の4つのパターンになります。当然ながら、心理的安全が高く責任も高い状態が望ましいです。

○心理的安全も責任も低い場合(無関心)
社員は自分の仕事に無関心になりがちで、楽をしがちになります。
○心理的安全は高く責任は低い場合
社員は互いに楽しく仕事をし、陽気であるが、挑戦意欲が低く、学習やイノベーションは行われない。コンフォートゾーン、つまりぬるま湯的です。
○心理的安全が低く責任は高い場合
管理者が高いパフォーマンス基準を社員に求めすぎ、その結果、社員に不安を感じさせています。社員による新しい提案や試行錯誤、支援の要請を行いにくくしています。
○心理的安全が高く責任も高い場合
社員間の協働や相互学習を促しています。

2.心理的安全を測るためのチェックポイント

経営者や管理職の方は、部下が次のように感じていないか考えてみるとよいでしょう。

① 部下が「自分は無知だと思われる不安」を感じていないか?

② 部下が「無能だと思われる不安」を感じていないか?

③ 部下が「邪魔だと思われる不安」を感じていないか?

④ 部下が「批判的だと思われる不安」を感じていないか?

3.心理的安全だけでは緩くなる

一方で、エドモンドソン教授は、心理的安全は大切ではあるが、目標設定や責任範囲が不明確では、ただの緩いチームになってしまい、チームの目的や目標を実現することはできないと言います。
実際に社員同士が仲が良いのですが、どこか危機感がなかったり、ぬるま湯につかって変化を恐れていたりするような雰囲気の組織をよく見ます。過度な緊張感は問題ですが、ある程度の緊張感は組織の成長のためには必要です。
心理的安全は、仲良しクラブを作るためのものではありません。高い組織目標を実現するために、組織のメンバーが自分の思ったことをきちんと言える環境をつくることが重要だということを忘れてはいけません。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝 元
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