-第212回-
生産性を高める変形労働時間制度の導入の仕方(1)
―まずは仕事とスキルの棚卸しから始めてみよう―
最近、物価や賃金の上昇、従業員のワークライフバランスの面から、生産性向上の必要性が一段と高まっています。生産性というとITに目がいきがちですが、本コラムでは労働生産性に注目していきます。まず前半で、作業改善と、従業員が力を発揮し続けるための学び(OJTやリスキリング)を考えていきます。そのうえで、後半は労働時間制度の特性を理解し、自社に合った制度の導入手順も検討します。
〇 まずは仕事の棚卸しをしよう
作業改善をするためには、負荷の高い仕事や作業の流れを停滞させる仕事を特定する必要があります。そこで、製造業であれば、繰り返し行われている作業について業務フロー図を使って、各作業工程の流れと必要な情報を確認しますし、サービス業であれば、従業員が忙しい曜日や時間帯、作業を特定します。人ごとに作業時間にバラつきがあれば、違いを確認し生産性の高い仕事のやり方に揃えていきますし、整理・整頓・清掃などに問題があれば、それも見直しします。
確認は経営者自ら行うだけでなく、主旨をしっかり伝えて、従業員にも協力をしてもらいましょう。様々な意見を出し合うことで、より様々な角度から検討ができ、いざ実行する時にも理解を得やすくなります。私も何度かストップウォッチで作業時間計測をされたことがあります。何故そういう作業方法をしているか、外形的に分からないこともありますし、ただ見られるよりは改善に参加したいですよね。
負荷が大きい業務が分かったら、その改善方法を考えます。そもそもその作業をする必要があるのか、なくても良い作業は止めます。必要な作業ならば、他の作業と一緒にできないか、他の作業と順序を入れ替えられないか、やり方を簡素化できないかを検討します。優先的に見直しをするのは、売上や利益に直結する作業からになります。
〇 新たな仕事のやり方と従業員スキルのマッチング
仕事の棚卸しと改善方法が決まったら、新たな仕事のやり方とその仕事を担当する人を割り当てていきます。今までの仕事の改善であっても、人によっては新たなチャレンジで、OJTが必要になる場合があります。その人の①現在のスキルを把握して、②達成レベルを決め、③期限と、④指導者を決めて実施します。⑤結果の評価を忘れないで実施します。スキルの一覧表を作成して、「見える化」することも励みになります。仕事の棚卸しの中で経営戦略として、新たな技術の導入などを考える場合がありますね。新たな技術は社内に指導できる人がいないのが普通ですので、もう少し大がかりになりますが、基本的な考え方は変わりません。後者は、「リスキリング」と呼ばれ、区別して考えられています。
次回は、自社に合った労働時間制度を考えていきましょう。
NPO法人中野中小企業診断士会 阿世賀和子(あせが)
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