-第203回-
ビジョンの描き方(2)
-未来からビジョンを描く-
前回はビジョンの描き方として現在(近い未来)から描く方法について紹介しました。今回は未来からビジョンを描く方法について紹介します。(参考図書:未来創造戦略ワークブック 河瀬誠著)
遠い未来からアプローチをする場合は、「1.未来の予測」「2.仮説の検討」「3.ビジョンの構想」の3つのステップを経ます。
1.未来の予測
未来を予測することは非常に難しいです。1950年代に発表された「鉄腕アトム」は、アトムをはじめ様々なテクノロジーが発展する21世紀の未来が舞台ですが、電話には黒電話が使われています。21世紀の現在、アトムのようなロボットは登場しておりませんが電話は携帯電話、スマートフォンと進化を遂げています。特に昨今はVUCA(注)とも呼ばれ、変化や不確実性が大きい世の中と呼ばれています。一方で、インターネットに収集のできない情報はなくなっております。専門的な情報でもビザスクのようなサービスを利用して情報を収集することもできます。天変地異やパンデミックなど予測できないこともありますが、ある程度の予測は可能です。予測の切り口には前回も紹介した「PEST分析」を用いて、「政治」「経済」「社会」「技術」の点からみるといいでしょう。
注) VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で、目まぐるしく変転する予測困難な状況を意味します。
2.仮説の検討
次に予測した未来に対して、仮説を立ててみましょう。「20年後は高齢化が進み、介護業界では人材の確保がますます厳しくなっている。他方で、ロボットが実用化し介護事業にロボットは必須となっている。」などです。そのような仮説をたくさん立てては検証してみます。立てた仮説のほとんどはボツになりますが、あきらめずにやってみるとうまくいきそうなアイデアが必ず見つかります。重要なことは多くの仮説を立てること(目標は100個)、仮説を立てる前に確度の高い未来を立てるための調査をしないことです。
3.ビジョンの構想
最後に仮説に基づき、ビジョンを構想します。重要なのはスキルや資金の有無ではなく、描いた未来に対してご自身が本当にやりたいという想いです。本当にそう思えるものが見つかるまで考え抜きましょう。描いたビジョンは一人では実現できません。友人や行政のサービスに相談することで具体的な事業構想について整理されていきます。描いた未来は訪れた現実と乖離するかもしれませんが都度調整しながら進めていくことになります。
前回ご紹介した現在(近い未来)からビジョンを描く方法は、現在の事業(または創業)に対して有効な手段です。一方、今回紹介した未来からビジョンを描く方法は、先行投資が続く形となり収益化までに時間を要します。しかしながら、急激な社会の変化により現在の事業は成り立たなくなってしまう可能性があります。このため、現在の事業を行う一方で、未来を予測しビジョンを描くことにも是非取り組んでみましょう
NPO法人中野中小企業診断士会 伊藤敬久(いとうたかひさ)