-第184回-
ファミリービジネスの事業承継 (1)
― ファミリービジネス経営者が事業承継のために準備すべきポイント ―

小規模な企業では事業承継を考えた時に「何から手を付けたらよいのか?」と先延ばしにしていませんか?事業承継を行う前には考えておくポイントがあります。
①事業承継の自己診断
自社の状況を客観的に判断してください。中小企業庁発行の「事業承継ガイドライン」に掲載の「自己診断シート」では事業承継を行う際に必要な項目がQ&A形式で記載されています。現時点で事業承継に足りない点を知ることができます。
②事業承継のタイプ
事業承継のスタイルとしてはア)子供等への親族 イ)従業員、知りあい等への第三者 ウ)M&A エ)廃業などがあります。 20年以上前は親族承継が全体の92.6%を占めていましたが、最近の10年間では親族承継が全体の60%まで減少して第三者への承継やM&Aが40%と増加しています。後継者がいないということもありますが、事業を残すためにふさわしい人に承継したいというニーズの高まりがあります。どのようなタイプの事業承継を目指すのか判断することが必要です。
③引退の時期(年齢)の決定
事業承継は後継者の教育期間も含めて5年から10年かかると言われています。引退年齢から逆算していつから事業承継の準備をするか考えてください。東京商工会議所の調査では30代で事業承継した経営者は新規事業に取組む割合が高く、57%の企業が事業を好転させたという結果が出ています。後継者のいる企業では事業承継の検討を早めに行う事が重要です。
④後継者の決定と意思確認
自分では後継者と考えていても意思確認をしないと「継ぐつもりはない」という事があります。 逆に「継ぐつもりだった」という事もあるので意思確認は必須です。後継者に指名されていても周囲にも後継者として認知されていないと後継者としてのモチベーションも上がらず、意欲も出ません。ある会社では50台の社長の息子さんが取締役で活躍されていました。ところが社長から明確に後継者と指名されていないので後継者かどうかわからないと話されていました。明確に本人や関係者に「後継者」として意識付けをすることで後継者としての意欲に繋がります。親族で後継者が見当たらない場合は、従業員への第三者承継やM&Aも選択肢の一つです。国も小規模企業のM&Aを重視して中小企業庁が運営する「事業承継・引継ぎ支援センター」で相談を受けています。
⑤事業承継計画表の作成
「事業承継計画表」を現経営者と後継者が共同で作成することで共通の目標を持つことが出来、関係者に公表する事で後継者として認知されます。「事業承継計画表」は「事業承継ガイドライン」にひな形が紹介されています。「事業承継ガイドライン」と「事業承継・引継支援センター」は下記のURLからアクセスできますので、一度確認して下さい。
・事業承継ガイドライン  
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/shoukei_guideline.pdf
・事業承継・引継ぎ支援センター
https://shoukei.smrj.go.jp/

NPO法人中野中小企業診断士会 竹内 義男(中小企業診断士・事業承継士)