-第183回-
失敗しない商品開発とは(2)
―柔らか頭の創り方・マーケティング戦略・資金調達を考える―
後半では「柔らか頭」を基本としてマーケティングと補助金のお話をしましょう。
2)マーケティングとは一言でいうと製品を創ることから販売するまでのすべての行為をいうのです。一般にはコトラー先生の4P(注)というものが有名ですが専門の話は別の機会に譲ります。
注)製品(Product)、価格(Price)、売る場所(Place)、販売促進(Promotion)
商品開発でマーケティングのセンスを養うということは「柔らか頭」を創るのと同様に重要ですがこれも日常生活で養うことができるのです。
例えば皆さんが趣味の製品(例えばコーヒーメーカー)を買いに行ったとします。そうすると使いやすさは?とか価格は?という具合にその商品について買う側の立場でいろいろ考えると思います。そこでちょっと思考範囲を広げて売り手の立場で考えをめぐらしてみるのです。どのようなコンセプトの製品か?対象の顧客は?ライバル製品は?売り方はどんな方法?TVでよく見るなとかいろいろな角度から考えてみてください。このように作り手の立場で考えることによって自然とマーケティングのセンスを養うことができるのです。ぜひ日常生活の中で実行してみてください。
3)資金調達について:最後に商品開発でどの企業様でも頭を悩ますのが開発資金です。そこで先立つ「開発資金」のお話をしましょう。
商品開発するに当たって多くの企業様は金融機関からの借り入れ、国、自治体の補助金を利用するか、最近では日用雑貨を中心にクラウドファンディングなどを利用する企業が大多数であると思います。金融機関から借りる場合には事業計画書を作成する必要がありますし、補助金を獲得するためには申請書を書く必要があります。
事業計画書や補助金申請書の書き方については様々なノウハウ書が出ているのでここでは、書く時の「気配り方」について考えてみたいと思います。
書く人の「気配り」とは事業計画書や補助金の申請書を審査員の立場で考えてみるということです。
一番目には審査員が理解しやすいストーリーで書くということです。
最後まで読んでやっと内容が理解できる書き方であったり、前の文章を見直してみないと内容が理解できない文章だと読み終わってみて疲れてしまいます。一方、新聞のようにタイトルで中身の概要が明確になっていて、頭から読んでいって必要な情報がスッと入っていくようなストーリーが明確になっている組み立ての文章は審査員の理解が得られやすいと同時に共感が得られやすいでしょう。
二番目には審査員は内容について専門家でないということです。
事業計画や補助金申請書を書く人は一生懸命、自社のことや開発商品について説明しようとするでしょう。専門用語を乱発したり、業界内用語で説明したりする方が非常に多いのです。しかし、審査員は業界の専門家ではないのです。ですから、審査員の方はわからない専門用語については調べながら読んでいくのです。ですから審査員にこのような手間をかけないように可能な限り専門用語を使うのを避け、専門用語を使用する場合は短く用語の解説をする「気配り」が大切です。
前回の「柔らか頭」の創り方も今回の審査員への「気配り」も根底に流れるのは自分中心でなく、商品開発に係るすべての人に対するコミュニケーション力ではないでしょうか。そしてこのような訓練を積み重ねることによってビジネスの成功確率は高くなると確信しています。
NPO法人中野中小企業診断士会 宮地直孝