-第180回-
対象顧客を具体化できますか?(1)
- ペルソナ、カスタマージャーニー・マップを描いて有効なアクションをとる -
新商品・新サービスの成否を決めるのは、「顧客の洞察(カスタマー・インサイト)」、つまり「顧客(ユーザー)をより良く知ること」です。ペルソナや、カスタマージャーニー・マップは、そのためのツールです。顧客の性別や年齢、職業、住所といった見えやすい部分だけでなく、嗜好や考え、ライフスタイルといった見えにくい部分や、行動特性を探り、自社商品が提供できる価値や、マーケティング手段を検討します。
1.ペルソナとは?
ペルソナとは、物語の主人公として架空の生活者(ユーザー)を設定し、動機や価値観など、自社が想定している商品・サービスと関連付けた人物像を記述するものです。ターゲット顧客の設定は一般的によく行われていますが、ペルソナはさらに典型的な顧客像を浮き彫りにしたものと考えてよいです。物語を目にした誰もが、主人公に対して本当にこんな人がいそうだと思えるように、リアリティを持たせることがペルソナ設定のねらいです。
<ペルソナの具体例>
・36歳男性。システムエンジニア。年収は750万円。都内の賃貸マンションに妻(派遣社員)と子供1人(3歳)と暮らしている。
・twitterやInstagramに毎日投稿しているなど、SNSを上手く活用している。新しいアプリを試すことにも積極的。
・知識やスキルキャリア志向が強く、将来は独立したいと考えている。
・ファッション、海外旅行など趣味への出費が多い。結婚しても感度は維持したいと考えている。
・休日は家族と買い物や食事に出かけたり、読書をしたりして過ごす。
2.ペルソナ設定の注意点
ペルソナの構成要素は、属性情報(架空の名前、性別、家族構成、職業、趣味、収入など)に加え、動機や価値観に関する情報、商品・サービスの購買・利用にあたっての背景情報です。こちらが描こうとしているビジネス機会を想定し、実際の対象者のことを念頭に置きながら記述していきます。
ペルソナ設定では、特に顧客の動機や価値観に関する情報が重要です。たとえば○○というブランドが好きという情報だけでは表面的な記述にとどまってしまいます。なぜそのブランドが好きなのか?なぜ△△ではなく、○○なのかを深掘りし、その情報を付加することで、そのペルソナの価値観がよりリアリティを持ちながら明確になっていきます。
<良いペルソナの条件>
・属性に加えて、休日の過ごし方や趣味などライフスタイルがうかがえる背景情報の記述があるもの
・行動や嗜好の理由が描かれているもの(「○○が好き」だけでなく、なぜ好きなのかが分かる)
・実在すると思えるリアリティがあるもの
・多くの人がこんな人がいそうだと思ってもらえるもの
ペルソナを設定したら、カスタマージャーニー・マップを作成します。次回は、カスタマージャーニー・マップについてご説明します。
NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元