-第177回-
財務管理 資金繰りから資金計画へ(2)
―大慌ての資金繰りからの脱却―
資金が不足する原因は、一体どこにあるのでしょうか。売上の不足の他に、仕入れや諸経費の増大などがまず考えられます。しかし売上もあり利益も出ているのに資金が不足するケースも出てきます。こういった場合にはどのような対処が必要なのでしょうか。
それでは、資金が不足する原因を大きく三つに分けてその対策を考えてみましょう。
一つ目は、売上不足で資金も不足するケースです。売上が立たない状況での融資は難しいため、まずは当初想定していた売上規模まで引き上げる必要性があります。
二つ目は、売上があるものの仕入れや経費が大きく資金が不足してしまうケースです。売上がある程度あれば、利益率の向上や固定費を下げる努力をすることにより利益を確保し、合わせて資金の確保も行います。
一と二について言えることですが、資金運用にしても資金繰りにしても、上手に行う大前提は利益が出ていることです。そうでない場合は、事業構造を根本的に見直しましょう。
三つ目は、売上もあり利益も出ているのに資金が不足しているケースです。これは資金の源泉である利益が出ているため、比較的対応しやすいと言えます。
このケースは3つのパターンに分けられます。
一つ目は、資金が資産に代わってしまうパターンです。売掛金の回収のスピードが遅い、あるいは売掛金の滞留や回収遅延、場合によっては貸し倒れたりすることもあります。例えば、売上が急速に伸びた場合に回収が追いつかずに資金不足に陥るケースが多くあります。また、売上の急下降期、例えば景気の下降期も要注意です。売り上げのいい時に振出した手形の決済があるので、資金が不足しやすくなります。売上に急が生じた場合は、資金に注意です。他に固定資産の購入も要注意です。
二つ目は、資金が棚卸資産に置き換わってしまうケースで、いわゆる過剰在庫の状態です。営業担当者の言いなりで仕入れをしていると過剰在庫になりがちです。適正な在庫を気にしましょう。
三つ目は、資金で負債を支払うケースで、借入金の返済ペースが早いケースです。当初の計画より利益の出るペースが落ちたため、結果として返済額が大きく感じられる場合があります。
また買掛金の支払ペースが速いパターンも考えられます。しかし、現状でも利益が出ており、金融機関からの融資を受けやすいので、資金調達によって資金繰りを改善することが可能です。
今回のまとめです。資金が不足する原因を上記のように大きく三つに分けて、その対策を考えましょう。
NPO法人中野中小企業診断士会 中川 浩一