-第176回-
財務管理 資金繰りから資金計画へ(1)
―大慌ての資金繰りからの脱却―
資金繰りは経営者の大事な仕事の一つではあります。しかし、資金のやりくりをいくら上手にしても利益は増えません。経営者にとって大切な仕事は日々の資金のやりくりではなく、資金の計画・調達・運用で、これが資金繰りというものです。
しかし、資金の不足は軽視できません。資金繰りを事前に計画的に行うか、追い込まれて直前で行うか、同じような業務でも意味合いが異なります。ギリギリの資金のやりくりから事前の資金計画へ変更することで、時間的な余裕や心理的な余裕も生まれ、経営者本来の仕事ができるようになります。ギリギリでの資金不足は割引手形や借入金、もしくは資産の処分でしか対応できないのです。
資金計画を事前に行うことによって、予め資金不足を確認して、金融機関への融資の依頼や売掛金買掛金の決済期間を変えて資金を調達することこそが、経営者の大事な仕事だと言えます。同じ時間をかけるのであれば、日々の資金のやりくりよりも、資金計画の方がいい対応策も思い浮かぶはずです。
資金繰りがうまくいかない理由はどこにあるのでしょうか。
資金繰りがうまくいかない原因の一つとして、経営を損益だけで見てないかという点があります。中小企業は儲かっているかどうかと同時に、資金があるかないかがとても重要です。
資金と利益の両輪が上手く回ってこそ事業が前へと進みますが、片方だけでは前に進みません。黒字倒産という言葉があります。いくら赤字を出しても、資金が続く限り会社は倒産しません。反対に、いくら利益を出していても、資金がなくなれば会社は潰れるのです。資金は、会社存続という面からみれば利益に優先します。
今回のまとめです。重要なことは、日々の資金のやりくりをいくら上手に行っても利益は増えません。そして、儲かっているかどうかと同時に、資金があるかないかが重要となります。また、直前の資金繰りは、時間的余裕がないので、打つ手が限られます。資金計画へシフトすることで、時間を十分に確保することができ、あらゆる手立てが可能になります。
資金繰り(余裕なし) → 資金計画(余裕あり) → 稼ぐ活動強化(経営者の本来業務)
NPO法人中野中小企業診断士会 中川 浩一