-第145回-
創業は大きく考え小さくスタートする(2)
-ベンチャー企業のセオリーであるリーン・スタートアップという考え方-

 前回、「新製品・新サービスの簡易版を素早く開発し、テスト販売して反応を確かめ、修正・改良すべき点を学ぶ」というリーン・スタートアップの考え方をご紹介しました。
リーン・スタートアップの考え方は、仮説検証アプローチにほかなりません。すなわち、「仮説を立ててすぐに検証する」という考え方です。創業者はまず試してみてから始めるという考え方が重要でしょう。

1.一般の創業への応用例

リーン・スタートアップは、もともとハイテク系のベンチャー企業のスタートアップに関する考え方ですが、それ以外の一般の創業のケースでも応用することができます。一般の創業希望者の方は、次のことを考えるとよいでしょう。

・脱サラする前に副業で始められないか?
・元手を少なくして始められないか?
・他社の資産を利用できないか?

前回の冒頭のケースでは、飲食店を開こうとしているAさんは、創作料理に自信があるようですが、それが受けるかどうかは分かりません。それにもかかわらず、広い店舗を借りてしまい、内外装やスタッフにお金をかけようとしています。
まずは、創作料理の反応を試験的に確かめる(たとえば可能であれば元の職場でメニュー化してお客の反応を見る)、テイクアウトだけで始める、あるいは小規模な店舗から始めるといったことも検討してもよいでしょう。

2.段階的に意思決定する

プロジェクトの考え方として、最初から本格的な投資を実行するのではなく、いろいろと選択肢(オプション)を用意して、様子を見ながらプロジェクトを進める「リアル・オプション」という考え方があります。

〇延期オプション
 様子が分かるまで投資の判断を延ばしにするというものです。例えば、マーケティングリサーチを行って反応を確かめるといったことです。

〇段階オプション
プロジェクトをいくつかのステージに分けて段階的に投資を行うというものです。例えば、第一段階で小規模で始め、上手くいったら第二段階で拡大投資して事業を発展させるといったケースです。リーン・スタートアップもこの考え方です。

〇撤退オプション
プロジェクトの失敗の基準をあらかじめ設けておき、実際にその基準を下回ったら撤退するという選択肢を持っておくというものです。

〇転用(柔軟性)オプション
環境の変化に対して、プロジェクトの内容を変更できるようにしておくというものです。例えば、当初は企業向けのサービスの開発が目的であったが、途中で消費者向けに変更するといったことです。

〇参入オプション
足がかりだけ確保しておき、本格的な意思決定は保留するというオプションです。例えば、優良物件が出たら事業を始める前に確保しておく、提携先を見つけておくといったことです。

創業もプロジェクトですから、様々なオプション(選択肢)を追加することでリスクを軽減でき事業としての価値を高めることができます。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元