-第143回-
物流改善のための仕組み作り(2)
-社内展開のための仕組み作り―
前回説明したトヨタ式問題解決手法を利用した物流改善の社内展開方法について説明します。
社内展開では教育研修、提案活動、表彰制度、人事考課など様々な手法が考えられます。
最初に取り組むべき項目は教育研修です。社内研修を行う場合は、一方的に講師が説明しても身に付けることは難しく、問題解決手法は理解するだけでは不十分で、実際に成果を出すことが求められます。
そのためアクションラーニングという教育手法で実施することが効果的です。研修の中で8ステップに基づいて実際に自分の業務上の問題を対象に問題解決を実施して、その進捗状況を確認しながら、必要に応じて見直しを行い、成果を出すまで繰り返し実施することが有効です。受講者には苦しいかもしれませんが、理解が進むと同時に、改善効果も期待でき、一石二鳥です。
全社的な展開にあたっては、改善コンテストが有効です。個人、グループで一定期間の改善活動を実施し、その内容を評価して順位付けします。全社的にコンテストを実施して、大々的に表彰式を実施するようなケースもあります。その際、高額な賞金が出る場合もあります。改善コンテスト開催のためには、展開のための体制作りが必要です。事務局の人材は問題解決手法を理解して、社内に浸透させることが求められます。
この改善コンテストは組織開発の一貫と捉えることができます。改善活動の導入は、組織文化を大きく変革することに繋がり、経営体質を強化することができます。事務局の人材は、社内変革を推進するチェンジエージェントの役割を担うことになります。社内の風土を変革させる原動力となるため、やる気と変革意識を持つ志の高い社員を任命することがポイントです。
改善コンテスト実施にあたり、自主性に任せるか、ある程度ノルマを課すかが検討課題となりますが、ある程度のノルマ化は避けられません。改善活動自体、非常に負荷がかかるものであるから、自主性に任せておくと、どうしても展開が進まないのが現実です。全社的な経営目標に入れる、管理職に個別目標を課す、社員の目標管理のKPIに入れるなどの方法が考えられます。
さらに、人事考課項目に問題解決のステップの項目を取り入れるというケースもあります。全てのステップを入れる必要はありませんが、幾つかのステップをまとめて人事考課の項目とすることも可能です。人事考課項目とすることで社員の意識も高めることが出来ます。社内への浸透の徹底を一番直接的な方法です。
NPO法人中野中小企業診断士会 田中浩二