-第139回-
直観と論理思考(2)
-VUCAの中で必要な能力の変化-

 前回はVUCAの環境下で論理思考だけでなく、直観力とのバランスが必要なことをお伝えしました。スティーブ・ジョブスが「直観を大事にせよ」というように直観は間違いなく大事になってきています。重要な直観力ですが、以下の点を意識して取り組んでいただけたらと思います。
・自分が明るくない分野では直観は働かない。
・経営学の基本や論理的思考を身につけることにより、正しい選択肢を選ぶ可能性が高まる。また、何かしらの刺激が加われば、時として思わぬアイデアが閃くきっかけとなる。 
・どれだけ良い直感が得られたとしても、その後の熟慮を欠くと、物事は好ましくない方向に転んでしまう可能性が高まる。ましてや、最初の直感が間違っていた場合、熟慮がないととんでもない結果を招く可能性がある。
ではどのように直観力と論理思考のバランスを身に着けていけばよいのかを以下の通りお伝えしたいと思います。
① 思考の瞬発力を鍛えるトレーニングをする
自分で質問を作ってすぐ答える練習をします。以下のように、最初は簡単なものもからスタートして徐々に難しくしていきます。
1. Yes or Noで答えられるもの 例 : この商品は売れるか?新しく入ってきた新人は優秀か?
2. 2つ以上の選択問題 例 : 夕飯は何を食べる?自動販売機でどの飲料を買う?
3. 理由を考える(答えのないものをできるだけ多く考える①)
 例 : なぜあの商品は売れたのだろう? 新聞に出ていたA社はなぜB社を買収したのだろう?
4. アイデアを考える(答えのないものをできるだけ多く考える②)
 例 :子供向けの教育商品はどんなものがあるか? など
    一旦、根拠は不要、正解 / 不正解も問いません。どんなテーマであっても、あれこれ頭を働かせる余地を持たないでスムーズにそのまま口から出てくるようになるのがゴールです。
② ひらめき」「おもいつき」を言葉で説明できるようにする
自分の「ひらめき」「思いつき」の理由 やおもしろさについて、ロジカルシンキングを使って説明します。自分の「ひらめき」「思いつき」は必要である / おもしろい。なぜならば、理由は3つあります。ひとつめは……。というイメージです。「結論と理由の関係」はロジカルシンキングで学ぶ分野です。
③ ネタとなる情報の体系的取得~「T字型 or Π字型の知識」を身につける~
最初にご自身の強み・興味があるところを1つ(もしくは2つ)選択して深く学びます。集中して深く学んだ方が早く経験ができ、知識が身にきます。専門分野を持つと他分野に応用できることが多いので、先に専門分野を学ぶ方が効率的です。加えて汎用性のある情報(教養、常識、トレンド)を身につけて、知識が1つ、もしくは2つの深く専門的な知識がある分野と浅く広い知識を持つ状態(T字型 or Π字型)になることを目指します。
④ セレンディピティの確率を高める
これまで得た経験や情報を“取り出せる”ようになる練習をします。普段からの情報収集がある程度、進んでいると、適切なタイミングで『そういえば、あのとき経験したことが結びつくな』と自然に発想できるようになります(これを「セレンディピティ」と呼びます)
⑤ 自分の直観力を検証する
自分の「直観」が正しかったか、間違っていたかを検証し、間違っていたらなぜ間違っていたのかを検証する
以上のようなステップを練習することにより、直観力と論理思考のバランスがとれるようになると思います。皆さんもチャレンジしてみてください。

NPO法人中野中小企業診断士会 堀川 一